AI概要
【事案の概要】 当時15歳の少年(被告1)が、少年院を仮退院した翌日に更生保護施設を脱走し、福岡市内の商業施設において面識のない女性(当時21歳)をトイレ内で包丁により殺害した事件に関し、被害女性の母(原告A)及び兄(原告B)が、被告1に対する不法行為に基づく損害賠償と、被告1の親権者である母親(被告2)に対する監督義務違反に基づく損害賠償を連帯して求めた事案である。 【争点】 主な争点は、(1)被告1の犯行当時の責任能力の有無、(2)親権者である被告2の監督義務違反の有無、(3)被害女性の兄である原告Bに対する民法711条の類推適用の可否、(4)損害額である。被告1は、虐待の影響等により自己の行為の意味を弁識する能力がなかったとして責任無能力を主張した。被告2は、被告1が平成28年以降施設に入所しており監督義務違反はないと主張した。 【判旨】 裁判所は、被告1について、共感性の欠如や自己中心的な認知傾向はあったものの、是非善悪の判断能力及び制御能力が欠けていたことをうかがわせる精神障害等の事情は認められないとして、完全責任能力を認めた。被告2の監督義務違反については、同居時の不適切な養育が被告1の暴力行動等に相当程度の影響を及ぼしたことは認めつつも、同居は事件の約4年半前までであり、その後は施設や少年院で矯正教育が行われていたこと、少年院の成績評価で粗暴性が解消されつつあったこと等から、被告2に予見可能性は認められないとして請求を棄却した。原告Bについては、母子家庭で父親代わりの役割を果たしていたこと等から民法711条の類推適用を認めた。損害額として、被害女性の死亡慰謝料3000万円、逸失利益約5217万円を認定し、犯罪被害者等給付金(遺族給付金)は逸失利益から損益相殺すべきとした。最終的に、被告1に対し原告Aへ約5188万円、原告Bへ220万円の支払を命じ、被告2に対する請求は棄却した。