損害賠償等請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 インターネット上で競馬予想指数(IDM指数)を掲載した競馬新聞を提供する控訴人(原告)が、原告の元従業員らが設立・運営する被控訴人会社(被告会社)及びその代表者ら(被告Y1~Y3)に対し、原告の営業秘密であるIDM指数作成プログラムや構成要素データ等を不正に使用して競馬新聞(ハイブリッド競馬新聞等)を発行したとして、不正競争防止法及び著作権法に基づく差止め・廃棄請求並びに損害賠償を求めた事案である。被告会社は原告の従業員が形式的に設立した会社であり、売上の75%を原告に支払う利益分配契約のもとで原告のシステムを使用して競馬新聞を発行していたが、令和元年10月に元従業員らがパソコン等を持ち出して退職し、独立後も競馬新聞の発行を継続した。原審は原告の請求をすべて棄却したため、原告が控訴した。 【争点】 主な争点は、(1)原告のIDM指数作成プログラム等の情報が不正競争防止法上の営業秘密に該当するか、(2)被告らによる営業秘密の不正取得・図利加害目的使用の有無、(3)被告らの利益隠匿による共同不法行為の有無、(4)本件プログラムの著作物性、(5)損害額であった。被告らは、プログラムが陳腐化したOSを使用しており有用性がないこと、書籍で計算式が公開済みであり非公然性がないことなどを主張した。 【判旨】 知財高裁は、原判決を変更し、原告の請求を一部認容した。まず、IDM指数作成プログラム等(本件情報1~4)は、原告独自のロジックに基づく競走馬予測システムであり、社外秘としてID・パスワード管理されていたことから、有用性・秘密管理性・非公然性をいずれも満たし営業秘密に該当すると判断した。書籍での情報公開についても、計算式の全容や数値化の方法までは開示されておらず非公然性は否定されないとした。次に、被告らは共謀のうえ、退職前には売上を隠匿して利益分配金の支払を免れさせ(共同不法行為)、退職後には営業秘密を使用してハイブリッド競馬新聞の発行を継続した(不競法2条1項7号違反)と認定した。損害額については、不競法5条2項に基づき被告会社の限界利益(税抜売上高×94%)を算定したうえ、被告側のブランド力や競合他社の存在等を考慮して30%の推定覆滅を認め、弁護士費用を含め合計約1億5039万円の連帯支払を命じた。他方、本件プログラムの著作物性については、ExcelやAccessのマクロ計算を利用する指令の表現にありふれたものを超える創作性は認められないとして否定し、著作権法に基づく請求は棄却した。また、地方競馬に係るマキシマム競馬新聞については、退職後に原告のシステムを使用していた証拠が不十分として不競法違反は認めなかった。