AI概要
【事案の概要】 木造建築における柱と梁を丁字状に締結する「締結金物」に関する特許権侵害訴訟である。原告は、前面部と後縁部を帯状に延びる複数の枝状部で一体化し、過大な荷重が作用した際に枝状部が塑性変形してエネルギーを吸収することで部材の破壊を遅延させる締結金物の特許(特許第5634732号)を有している。原告及び原告から独占的通常実施権の許諾を受けたとする原告会社が、被告の製造・販売する締結金物(6製品)が本件特許の技術的範囲に属するとして、差止め・廃棄及び損害賠償金約456万円の支払を求めた。 【争点】 主な争点は、(1)被告製品が構成要件B(前面部と後縁部が「離れて配置」されていること)及び構成要件D(帯状に延びる複数の枝状部を介して一体化していること)を充足するか、(2)甲5文献(意匠登録公報)に基づく新規性欠如の無効の抗弁が成立するか、(3)甲4文献に基づく進歩性欠如の無効の抗弁が成立するか、(4)訂正後の請求項に基づく請求の可否であった。 【判旨】 裁判所は、甲5文献(意匠登録第1179101号・柱材連結金具)に基づく新規性欠如の争点から判断した。まず、構成要件Dの「過大な荷重が作用した際に変形を誘発させるため」という記載について、本件明細書の記載を詳細に検討し、これは前面部と後縁部を複数の枝状部で一体化する構成により必然的に得られる作用・効果を示すものにすぎず、発明の構成を限定する意味を持たないと判断した。そのうえで、甲5発明の柱材連結金具は本件発明の締結金物と形状において同一の構成を備えており、金属製の枝状部を備える締結金物が枝状部のない締結金物より耐力強度が劣り塑性変形しやすいことは技術常識であるから、甲5発明の複数の細板部も「過大な荷重が作用した際に変形を誘発させる」作用・効果を必然的に得られるとした。したがって、相違点1は実質的な相違点ではなく、本件発明は甲5発明と実質的に同一であり新規性を欠くと認定した。原告が主張した訂正後の請求項に基づく請求についても、訂正請求が確定していないため前提を欠くとして退け、原告らの請求をいずれも棄却した。