AI概要
【事案の概要】 a町議会の議員である申立人らが、同町議会の解散請求に係る直接請求署名簿の署名の効力につき、同一筆跡による無効署名や代筆要件を欠く無効署名が含まれるとして選挙管理委員会(相手方)に異議を申し出たところ、相手方が各異議の一部を棄却する決定(本件各裁決)をしたため、本案訴訟(裁決取消請求事件)の判決確定まで本件各裁決に基づく手続の続行の停止を求めた事案である。署名簿には2510人分の署名がされ、相手方は最終的に2135人分を有効と判定したが、解散請求に必要な法定署名数は2127人分であり、有効署名数との差はわずか8人分であった。 【争点】 主たる争点は、行政事件訴訟法25条2項に基づく執行停止の要件、すなわち①重大な損害を避けるため緊急の必要があるか、②公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるか、③本案について理由がないとみえるときに当たるかである。具体的には、本件各裁決までに死亡した署名者2人分の署名の効力、代筆要件の充足性が疑われる9人分の署名の効力、及び異議理由と異なる事由(死亡)による署名無効の主張の可否が問題となった。 【判旨】 裁判所は申立てを認容し、本案判決確定まで手続の続行を停止した。まず、署名2510人分のうち約15%に当たる375人分が審査段階で無効と判定されており、有効と判定された署名中にも無効署名が混在する可能性が相当程度あると指摘した。次に、本件証明終了時点で既に死亡していた2人分の署名は有効と認められないとし、異議理由の追加が許されないとする相手方の主張については、署名効力に関する争訟は署名に関わる全てを対象とし訴訟物は処分の違法性一般であるとして排斥した。さらに、代筆要件が疑われる9人分については、署名収集受任者の陳述内容が代筆要件充足の判断に甚だ不十分であり、署名者本人がいずれも自署可能と回答していることから、代筆要件を充たすとは認められないとした。以上から、有効署名数は2135人分から少なくとも11人分を控除した2124人分以下となる蓋然性が高く、法定数2127人分を下回ると認定し、重大な損害を避けるため緊急の必要があると判断した。住民投票の実施停止が公共の福祉に影響するとの相手方の主張についても、法定署名数が満たされていない蓋然性が高い状態で手続を続行することはかえって地方自治・民主主義の根幹を損なうとして退けた。