損害賠償請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 PCSK9(プロタンパク質コンベルターゼスブチリシンケクシン9型)に対する抗原結合タンパク質に関する特許権(特許第5705288号及び特許第5906333号)を有する控訴人(米国法人アムジエン・インコーポレーテッド)が、被控訴人(サノフィ株式会社)の販売する高コレステロール血症治療薬「プラルエント」が上記特許発明の技術的範囲に属し特許権を侵害すると主張して、10億円の損害賠償を求めた事案の控訴審である。原審は、本件特許がサポート要件及び実施可能要件に違反し無効であるとして請求を棄却しており、控訴人がこれを不服として控訴した。 【争点】 主な争点は、(1)本件特許の特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか、(2)被控訴人によるサポート要件違反等の主張が一事不再理効や訴訟上の信義則に反し許されないか、(3)控訴人が主張する訂正の再抗弁(明細書の「中和」「競合」の意義の限定等)が成立するか、である。 【判旨】 控訴棄却。知財高裁は、本件特許に係る発明は、参照抗体(21B12抗体・31H4抗体)と競合する抗体であれば、参照抗体と同様にLDLRタンパク質の結合部位を直接封鎖してPCSK9とLDLRの結合を中和する特性を有することを特定した点に技術的意義があると認定した。しかし、「参照抗体と競合する」抗体には、参照抗体の結合部位と異なる部位に結合し軽微な立体的障害をもたらすにすぎない抗体も含まれ得るところ、そのような抗体が結合中和活性を有するメカニズムは明細書に開示されていないと判断した。実証実験でも、参照抗体と競合する抗体の約80%が結合中和性を有しないことが確認されており、サポート要件違反が認められた。また、被控訴人の主張が信義則等に反するとの控訴人の主張は、第2回審決取消訴訟で新証拠に基づきサポート要件違反が認められ判決が確定した経緯等に照らし退けられた。訂正の再抗弁についても、訂正事項1(「競合」の限定)及び訂正事項2(「中和」の限定)は、明細書の他の段落に間接的手段や立体的妨害による中和の記載が残存しており意義の限定に至らないとして、特許請求の範囲の減縮に該当せず認められなかった。