廃棄物撤去等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 原告Aらが、原告A所有の土地(群馬県渋川市近郊)に埋められている異物は、被告(特殊鋼製造会社)が排出した鉄鋼スラグであり、その膨張による建物被害(基礎コンクリートのひび割れ、床の傾斜、水道管の破裂等)及び含有される有害物質(フッ素・六価クロム)による被害を受けたと主張して、被告に対し、①所有権に基づく妨害排除としての廃棄物撤去、②不法行為又は債務不履行に基づく損害賠償(原告Aにつき合計約2億5000万円、原告会社につき約5076万円、原告家族らにつき各330万~550万円)を求めた事案である。昭和55年頃、亡H(原告Aの父)が宅地造成のため被告従業員の勧めで鉄鋼スラグの無償提供を受け埋め土として使用したところ、平成2年頃から建物の膨張被害が発生し、平成27年の調査で鉄鋼スラグと環境基準値超のフッ素・六価クロムが検出された。 【争点】 主要な争点は、①本件異物が被告排出の鉄鋼スラグであるか(争点1)、②被告が所有権に基づく妨害排除義務を負うか(争点2)、③妨害排除請求が権利濫用に当たるか(争点3)、④不法行為に基づく損害賠償請求権の除斥期間の経過の有無(争点8)、⑤債務不履行に基づく損害賠償請求権の消滅時効の成否(争点10)である。被告は、本件異物が鉄鋼スラグであること及び被告が排出元であることを争い、仮に鉄鋼スラグであっても有価物であり産業廃棄物には該当しないと主張した。 【判旨】 裁判所は、鑑定嘱託の結果(蛍光X線分析・X線回折分析、フッ素溶出量の環境基準値超過比率91%等)に基づき、本件異物が電気炉系の鉄鋼スラグであると認定した。また、被告渋川工場との近接性(8.92km)、成分の類似性、亡Hへの提供経緯等から、被告が排出元であると推認した。さらに、搬入当時の鉄鋼スラグは安定化技術が未確立で有効利用が遅れており、エージング未処理で有害物質を含む本件異物は産業廃棄物に該当するとして、被告は亡Hを利用して侵害状態を作出した者として妨害排除義務を負うと判断した。権利濫用の主張も退けた。一方、不法行為に基づく損害賠償請求権は除斥期間(20年)の経過により、債務不履行に基づく損害賠償請求権は消滅時効(10年)により、いずれも消滅していると判断した。結論として、鉄鋼スラグを含む廃棄物の撤去請求のみを認容し、損害賠償請求は全て棄却した。