保有個人情報不開示決定処分取消請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 殺人罪により懲役刑に処せられ刑務所に収容された後、釈放後の再審請求が認められ再審無罪が確定した原告が、矯正管区長に対し、個人情報保護法76条1項に基づき、刑務所収容時の被収容者身分帳簿に編綴された入所時の精神状態及び知能検査結果の開示を請求したところ、矯正管区長が同法122条1項(刑事事件に係る裁判・刑の執行に係る保有個人情報の適用除外規定)を理由に全部不開示とする決定をしたため、原告がその取消し及び開示決定の義務付けを求めた事案である。 【争点】 (1) 再審無罪判決が確定した者の刑執行処遇保有個人情報(刑務所収容時の処遇調査結果等)が、個人情報保護法122条1項所定の保有個人情報に該当するか。被告は、同項は有罪・無罪を問わず一律に適用除外とするものであり、文理上明らかであると主張した。原告は、同項の趣旨は前科等の開示による社会復帰上の不利益防止にあり、無罪確定者には妥当しないと主張した。 (2) 個人情報保護法122条1項の規定が違憲無効であるか。 【判旨】 請求一部認容(不開示決定取消し)・一部棄却(開示決定義務付け)。裁判所は、個人情報保護法122条1項の趣旨は、前科・逮捕歴等が開示請求を通じて本人以外の者に明らかとなり社会復帰等に不利益を生じることの防止にあるところ、再審無罪判決の確定により原確定判決は失効し、公訴事実は「前科」ではなくなり、刑の執行も遡及的に根拠を失うことから、雇用主が前科チェック目的で開示請求させるといった不利益は想定困難であると判示した。また、最高裁令和3年6月15日判決を引用し、同項の該当性は文理から形式的に判断するのではなく趣旨等を踏まえて実質的に解釈すべきであるとした上で、刑執行処遇保有個人情報は再審無罪判決確定後には同項所定の保有個人情報に該当しないと判断し、本件不開示決定を違法として取り消した。もっとも、開示決定の義務付けについては、処遇調査票の記載内容や不開示情報該当性について主張立証がなく、矯正管区長に別途判断させるのが相当であるとして棄却した。
裁判要旨
有罪判決に基づく刑の執行としてされた刑務所への収容の際の処遇に係る保有個人情報は、当該有罪判決に係る公訴事実について再審無罪判決がされてこれが確定した後においては、令和3年法律第37号による改正のうち令和5年4月1日を施行日とする改正の前の個人情報保護法122条1項所定の適用除外に係る情報(「刑事事件…に係る裁判…に係る保有個人情報」及び「刑…の執行…に係る保有個人情報」)に該当しない。