AI概要
【事案の概要】 被告人は、令和5年9月21日、自宅で妻である被害者(当時35歳)に対し、殺意をもって何らかの方法で頸部を圧迫し、窒息により死亡させて殺害した上、同日頃から約1か月間にわたり遺体を自宅に放置して死体を遺棄したとして起訴された。原審で被告人は死体遺棄は認めたものの、殺人については「被害者の死因は自殺である」と主張して否認した。原審裁判所は裁判員裁判の結果、いずれの犯罪事実も認定し、懲役16年の有罪判決を言い渡した。弁護人が事実誤認を理由に控訴した。 【争点】 被害者の死因が他殺(被告人による殺害)か自殺かが最大の争点となった。具体的には、①法医学者3名の供述の信用性評価(A・B医師は絞頸による他殺、C医師は複合的原因による気道閉塞で自殺の可能性を指摘)、②遺体の右錐体部のうっ血様変化の原因(血液就下か頸部圧迫か)、③溢血点が確認されなかったことの評価、④被告人が事件当日に「刑事事件 弁護士」と検索した意図、⑤被害者の遺体付近にビニール袋があったとする被告人供述の信用性、⑥被害者が自殺に至る動機の有無が争われた。 【判旨(量刑)】 福岡高裁は控訴を棄却した。原判決の説示には一部首肯できない部分もあるとしつつ、結論を支持した。特に、C医師の供述について、被告人供述を基本的に信用するスタンスで死亡直後の状況に全面的に依拠しており、鑑定資料・方法の適切性と公平性を著しく欠くと指摘した。A・B医師の供述から被害者は他殺されたと強く推認され、被告人が被害者の死亡を通報せず「刑事事件 弁護士」と検索した行動や、身の潔白を証明し得るビニール袋を処分したとする説明の不自然さ等は、被告人による加害行為を相当に強く推認させるものであり、犯行現場の状況から被告人以外に加害者は存在し得ないことも併せ、合理的疑いなく殺人が認定できるとした。原判決の懲役16年が維持された。