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【事案の概要】 しいたけの登録品種「森XR1号」(登録番号第17039号)の育成者権を有する原告が、被告千葉泉産業(しいたけの生産・販売)及び被告東陽物産(菌床の輸入・譲渡)に対し、被告らが原告品種と同品種の種苗を用いて収穫物を生産・譲渡する行為が育成者権を侵害するとして、民法709条及び719条1項に基づき、連帯して損害賠償金5548万5724円及び遅延損害金の支払を求めた事案である。原告は、種苗管理センター職員立会いの下、被告千葉泉が生産した椎茸商品を購入してサンプルを採取し、子実体から菌糸を分離・植継ぎした上で比較栽培試験(鑑定)を実施し、原告品種との類似性を主張した。 【争点】 主要な争点は、①本件各分離行為及び本件各植継行為の信用性(争点1-1)、②本件鑑定の信用性(争点1-2)、③共同不法行為の成否、④損害額である。特に、原告が自社内で菌糸の分離・植継ぎ作業を行い、自ら用意した試験管を使用したことについて、原告品種の菌糸を事前に混入させた可能性が排除できるか、また原告が親株を廃棄したことにより事後的検証を不可能にしたことの問題が核心的争点となった。 【判旨】 請求棄却。裁判所は、しいたけの菌糸は目視できない程度の大きさでも十分に存在し得るものであり、寒天培地で培養した微小な菌糸を試験管の培地上に塗布又は滴下すれば目視可能な大きさまで生長させることができると認定した。原告が自社内で事前に試験管を準備しており、原告品種の菌糸を混入させるに十分な時間があったこと、さらに原告が本件親株を廃棄して事後的検証を自ら不可能にしたことを重視し、原告が試験管に原告品種の菌糸を事前に混入していた可能性を十分に否定できないと判断した。裁判所は、本件各植継行為等は本来第三者機関で実施されるべきであり、少なくとも試験管は第三者機関に用意させ、親株も保管しておくことが鑑定の公平性・透明性の観点から必要不可欠であったとし、これを怠った本件鑑定は信用性を欠くとして、その余の争点を判断するまでもなく原告の請求を棄却した。