AI概要
【事案の概要】 被告人は、a水道事業の上下水道課水道係主査及びe病院事務部総務係主査として会計経理・現金出納業務に従事していた者である。平成28年6月から令和4年6月までの約6年間にわたり、業務上預かり保管していた預貯金口座から現金を引き出して着服し(第1:約1929万円、第2:合計約4336万円)、また医事係担当者から入金のために預かった病院売上金の一部を着服し(第3:合計約1億0720万円)、合計697回、総額約1億6985万円を横領した。弁護人は個々の横領について、現金渡票の記載金額と日計表等の現金収支の金額との食い違いや、対応する現金渡票が存在しない少額入金の存在等を指摘し、一部の横領行為の不存在を主張した。 【争点】 主な争点は、第3の各横領行為における個別の横領金額の認定である。弁護人は、(1)現金渡票の記載金額と日計表等から計算される現金収支の金額に数百円から数千円の食い違いがある場合、実際に被告人に引き継がれたのは日計表等の金額であり、入金額との差額が1万円未満となるから横領はなかった、(2)横領金額算出の基礎とされた入金のほかに少額の入金がある場合、その入金に対応する現金渡票が存在しないのは不自然であるなどと主張した。 【判旨(量刑)】 裁判所は、医事係担当者が被告人に手渡した現金の金額は現金渡票の記載金額と同一であると認定し(説示A)、入金額が現金渡票の記載金額より少ない場合その差額分は被告人が横領したと認めるほかないとした(説示B)。また、被告人の「5万円、10万円、10万円超は10万円単位で横領していた」との供述にそれなりの具体性・合理性があるとし(説示C)、少額入金についても、横領期間中の入金状況から1枚の現金渡票について複数回入金される場合は極めてまれであるとして(説示D)、弁護人の主張をいずれも排斥した。量刑においては、6年余にわたる697回もの常習的犯行であること、会計システムのデータ改ざんによる偽装工作を行った大胆・狡猾な犯行であること、被害額が約1億6985万円と巨額でその大部分が弁償されていないことを重視し、他方でおおむね事実を認めて反省していること、1153万円余の被害弁償、前科前歴がないことを考慮し、求刑懲役8年に対し懲役7年(未決勾留日数780日算入)を言い渡した。