AI概要
【事案の概要】 刑事施設(αセンター)に受刑者として収容されていた原告が、金属アレルギーを理由にひげそりを拒否したところ、職員が有形力を行使して強制的にひげをそった措置(本件措置)、ひげそり拒否を理由に閉居10日間の懲罰を科された処分(本件懲罰)、及び同懲罰に対する審査申請を却下した裁決(本件裁決)がそれぞれ国家賠償法上違法であると主張するとともに、入院中の処遇、主食区分の指定、カメラ室への収容、ひげそりの継続的強要、優遇区分に関する措置、弁護士信書の取扱い等の多数の違法処遇を主張して、国賠法1条1項に基づき慰謝料合計460万円等の支払を求めた事案である。 【争点】 (1) 金属アレルギーを理由とするひげそり拒否に対し、有形力を行使して強制的にひげをそった本件措置の違法性(争点1)、(2) ひげそり拒否を「職員への反抗」として閉居10日の懲罰を科したことの違法性(争点2)、(3) 懲罰執行終了後に審査申請を却下した裁決の違法性(争点3)、(4) 入院中の各種処遇・主食区分・医療措置・カメラ室収容・ひげそり継続強要・優遇区分・弁護士信書取扱い等の違法性(争点4〜13)。 【判旨】 裁判所は、本件措置について、原告が令和3年8月以降繰り返し金属アレルギーの症状を訴え、施設の皮膚科医師も外部施設でのパッチテスト実施の必要性を繰り返し所見として示していたにもかかわらず、施設側はこれを考慮せず、確定診断がないことを過度に重視し、原告の申出の信憑性は極めて低いなどと決めつけていたと認定した。原告が居室内作業に従事しひげも数mm〜10mm程度であったこと等から、ひげをそらせる具体的必要性・緊急性は認め難く、有形力を行使して強制的にひげをそった本件措置は刑事収容施設法60条1項の趣旨目的達成に必要かつ相当な限度を超え、国賠法上違法であると判断した(慰謝料3万円)。本件懲罰についても、正当な理由のあるひげそり拒否を遵守事項違反と評価したことは合理的根拠を欠き、最も重い閉居罰を科したことは著しく合理性を欠くとして違法と判断した(慰謝料15万円)。一方、本件裁決については懲罰執行終了により不服申立ての利益は消滅したとして適法とし、その他の処遇(争点4〜13)についてはいずれも違法性を否定した。結論として、合計18万円及び遅延損害金の支払を認容し、その余の請求を棄却した。
裁判要旨
金属アレルギーを理由にひげそりを拒否した受刑者に対し、刑事施設の職員が有形力を行使して強制的にひげをそった措置は、当該受刑者が金属アレルギー及びかみそりによる皮膚の炎症を繰り返し訴え、当該受刑者を診察した皮膚科医師が金属アレルギーの正確な診断を行うためにパッチテスト等を外部施設で実施する必要がある旨の所見を示していたことや、当時、当該受刑者がひげをそらないことにより、衛生管理における支障、安全衛生面での危険、他の受刑者の矯正処遇の適切な実施における支障などが生じる具体的なおそれがあったとは認め難いことなど、判示の事実関係の下においては、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律60条1項の規定の趣旨目的を達成するために必要かつ相当な限度を超えるものであり、かつ、同法77条1項の制止等の措置として合理的に必要な限度を超えるものであって、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然とされたものというべきであるから、国家賠償法上違法である。