AI概要
【事案の概要】 原告A(74歳女性)は、被告市が開設運営する赤穂市民病院において、腰部脊柱管狭窄症の治療として腰椎後方除圧術を受けた際、執刀医である被告Cの手技上の過失により腰椎部の馬尾神経を切断損傷され(本件医療事故)、両下肢麻痺・重度膀胱直腸障害・神経障害性疼痛等の後遺障害(自賠法施行令別表第一1級1号相当)が残った。また、入院中に病室内で転倒し右脛腓骨骨折等の傷害を負った(本件転倒事故)。原告A及びその長女である原告Bが、被告Cに対し不法行為責任、被告市に対し使用者責任又は債務不履行責任に基づき、損害賠償の連帯支払を求めた事案である。なお、本件医療事故について被告Cに手技上の過失があり被告らが損害賠償責任を負うことは当事者間に争いがない。 【争点】 (1) 原告らの各損害額(争点1)。特に後遺障害慰謝料の増額事由として、被告Cの技量不足(入職9か月で11件の医療事故関与)、後遺障害の重大性、手術前の虚偽説明の有無、病院の監督・安全管理体制の不備、事故後の不誠実な対応等が主張された。被告Cは加重障害(既存の人工骨頭置換)や社会的制裁(ウェブ漫画)による慰謝料減額を主張した。将来介護費用における介護保険給付の扱いも争われた。(2) 本件転倒事故についての被告市の責任の有無(争点2)。転倒防止のための付添観察義務の存否が争われた。 【判旨】 裁判所は、本件医療事故につき被告Cの注意義務違反の程度は著しいと認定し、11件の医療事故が検証対象とされたことは技量の稚拙さをうかがわせ過失の重大性を裏付けるとした。後遺障害の重大性や算定困難な苦痛、事故後の病院の対応に迅速さと配慮の不足があったことも認め、後遺障害慰謝料を3300万円と認定した。一方、手術前説明の虚偽性、病院の監督不備、訴訟対応の悪質性については慰謝料増額事由とは認めなかった。加重障害・慰謝料減額の主張も排斥した。将来介護費用については、介護保険給付分を含む日額1万3000円を基礎とし、介護保険法の趣旨や制度の不確実性を考慮して自己負担額に限定すべきでないとした。本件転倒事故については、事故直前に訪室した看護師が危険行動のないことを確認しており、付添観察義務は認められないとして請求を棄却した。結論として、原告Aにつき8668万6851円、原告Bにつき220万円及び遅延損害金の連帯支払を認容した。