AI概要
【事案の概要】 死刑確定者の再審請求弁護人であった原告ら(大阪弁護士会所属の弁護士)が、第4次再審請求中であった平成30年12月27日に法務大臣の命令により当該死刑確定者に対する死刑が執行されたことについて、再審請求中に死刑を執行してはならない職務上の義務に違反した違法な死刑執行により、再審請求弁護人としての弁護権が侵害されたと主張して、国家賠償法1条1項に基づき、被告(国)に対し、各550万円(慰謝料500万円及び弁護士費用50万円)の損害賠償を求めた事案である。なお、当該死刑確定者は強盗殺人等により平成7年に死刑判決を受け、平成16年に確定し、第1次から第3次までの再審請求はいずれも棄却されていた。 【争点】 (1) 再審請求中の死刑執行が国賠法上違法か(憲法32条・31条違反、刑訴法475条2項ただし書違反、自由権規約6条4違反、昭和32年通牒違反の各主張の当否) (2) 原告らの損害の有無及び額 【判旨】 裁判所は、原告らの請求をいずれも棄却した。まず、憲法32条が保障する裁判を受ける権利は、刑事裁判における対審及び判決による手続を定めたものであり、非常救済手続である再審請求手続はこれに含まれないとした。次に、憲法31条については、再審請求により当然に死刑執行が停止されるとすれば、不断の再審請求の繰り返しにより死刑執行が永続的に不可能となる不合理が生じることを指摘し、一律に死刑執行を禁止する義務は導けないとした。刑訴法475条2項ただし書は6か月の期間計算に関する規定にすぎず、執行停止効を認めたものではないとした。自由権規約6条4の「特赦(pardon)」については、再審制度は裁判所による司法権の行使であり、通常国家元首によってなされるpardonとは実施主体及び性質が異なるとして、文理解釈の範囲を超えるとした。自由権規約委員会の一般的意見や総括所見についても、制度導入の勧告にとどまり、現行法上の義務を示したものではないと判断した。昭和32年通牒は法的拘束力のない一般的指示にすぎないとした。もっとも、裁判所は付言として、死刑が不可逆的かつ究極の刑罰である以上、再審請求中の死刑執行が国賠法上違法と評価される場合があり得ることまでは否定されないと述べた。