AI概要
【事案の概要】 原告(スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー)は、「キューブコーナー素子を有する層状体および再帰反射シート」に関する特許(特許第5302282号)の特許権者である。被告(日本カーバイド工業)が請求した無効審判において、特許庁は、本件各特許発明は甲27(特表2002-541504号公報)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとして、請求項1ないし4に係る特許を無効とする審決をした。原告は同審決の取消しを求めて本件訴訟を提起した。 【争点】 本件各特許発明と甲27発明との相違点(隣接する複数のキューブコーナー素子のそれぞれが所定の二面角誤差を有し、その誤差が大きさ及び符号において変化しており、大きさが1分〜60分であるとの構成)に係る容易想到性が争点となった。原告は、甲27及び甲42における溝側面を単位とした半角誤差の制御と、本件特許発明における二面角を単位とした二面角誤差の制御とは技術的思想が全く異なり、甲27からは二面角誤差の具体的な制御方法が導けないと主張した。被告は、甲27の本件段落には溝の半角誤差の導入によるキューブコーナー素子の個別調整が開示されており、甲42にも互いに異なる形状のキューブコーナー素子が開示されていると反論した。 【判旨】 知的財産高等裁判所は、原告の請求を棄却した。裁判所は、甲27の本件段落に記載された従来技術(甲73・甲42)に基づき、3方向の溝側面のそれぞれに異なる繰返しパターンの溝の半角誤差を導入することで、互いに異なる三つの二面角誤差を有する複数のPGキューブコーナー錐体が隣接配置される構成に当業者が容易に想到できると判断した。また、二面角誤差の数値範囲(1分〜60分)については、本件明細書の実施例との対応関係が不明であり特段の技術的意義が認められないとした。さらに、切頭型と完全キューブ型とで再帰反射の基本的作用・原理に違いはなく、甲73には互いに異なる三つの二面角誤差を有するキューブコーナー素子の隣接配置構成が開示されているから、本件各特許発明の効果が予測できない顕著なものであるとも認められないとして、審決の判断に誤りはないと結論付けた。