AI概要
【事案の概要】 後発医薬品メーカーである沢井製薬(原告)が、ダサチニブ(無水物)を有効成分とする後発医薬品「ダサチニブ錠サワイ」を製造販売したところ、先発医薬品「スプリセル錠」(有効成分:ダサチニブ水和物)に係る特許第3989175号(環状タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤)の特許権者であるブリストル-マイヤーズ スクイブ(被告)との間で紛争が生じた。原告は本訴で、存続期間延長登録後の本件特許権の効力が原告製品に及ばないことの確認等を求め、被告は反訴で、特許権侵害に基づく1億円の損害賠償を請求した。 【争点】 (1) 延長登録された本件特許権の効力が原告製品に及ぶか(原告製品とスプリセル錠が医薬品として「実質同一」といえるか)、(2) 本件各延長登録の無効理由の有無(処分により禁止が解除された行為が本件発明の実施に該当するか、延長期間が過分か)、(3) 被告の損害額。中心的争点は、有効成分がダサチニブ水和物(先発)と無水物(後発)で異なること、及び添加剤の相違が「僅かな差異又は全体的にみて形式的な差異」にとどまるかである。 【判旨】 裁判所は、本訴請求をいずれも確認の利益を欠くとして却下し、反訴請求を棄却した。争点1について、本件発明は医薬品の有効成分のみを特徴とする物質特許発明であるが、原告製品はスプリセル錠と有効成分以外の「成分」(添加剤)においても差異があり、原告がダサチニブ無水物と水和物の性質の違い(光安定性・溶出性等)に起因する課題を克服するため、PEGをHPCに転換し、カルナウバロウを添加するなど独自の創意工夫を行ったことが認められるとした。これらの添加剤の付加・転換が周知慣用技術に基づくものと認めるに足りる証拠はなく、原告製品はスプリセル錠と医薬品として実質同一とは認められないと判断し、延長後の本件特許権の効力は原告製品に及ばないと結論づけた。