AI概要
【事案の概要】 原告は、国土交通大臣がJR東日本に対してした運賃上限変更認可処分(変動運賃制・オフピーク定期券導入に伴うもの)について、その取消しを求めて審査請求をしたところ、国土交通大臣から、鉄道利用者にすぎない原告には審査請求人適格がなく、審査請求は不適法であって補正することができないことが明らかであるとして、審理手続を経ることなく却下する裁決を受けた。原告は、①同裁決の取消しと、②国家賠償法1条1項に基づく慰謝料20万円の支払を求めて提訴した。 【争点】 (1) 本件裁決の適法性(本件審査請求が「不適法であって補正することができないことが明らか」(行政不服審査法24条2項)に該当するか) (2) 国家賠償法上の違法行為及び損害の有無 【判旨】 裁判所は、裁決取消請求を認容し、国家賠償請求を棄却した。争点(1)について、被告は近鉄特急最高裁判決(平成元年)に依拠し鉄道利用者の審査請求人適格を否定したが、同判決は廃止された地方鉄道法に関するものであり、鉄道事業法16条1項に基づく運賃上限変更認可処分の原告適格について判断した最高裁判決は存在しないと指摘した。さらに、鉄道事業法が「利用者の利益の保護」を目的規定に明記していること等を理由に近鉄特急最高裁判決の射程は及ばないとした東京地裁平成25年判決が存在し、同判決の判断は上訴審でも維持されていることから、審査請求人適格の有無を判断するには審理手続を経る必要があったとし、本件裁決は行政不服審査法24条2項の要件を欠く違法なものであると判断した。争点(2)について、近鉄特急最高裁判決に依拠したことには一応の論拠が認められるとして、国家賠償法上の故意又は過失は認められないとした。
裁判要旨
鉄道会社に対する運賃上限変更認可処分の取消しを求めて審査請求をした鉄道利用者につき、審査請求人適格を有しないことを理由に行政不服審査法24条2項により審理手続を経ることなく審査請求を却下した裁決について、鉄道事業法16条1項に基づく運賃上限変更認可処分の取消しの訴えに係る原告適格又は審査請求に係る審査請求人適格について判断した最高裁判決は見当たらないこと、同法の制定に伴い廃止された地方鉄道法21条に基づく運賃変更認可処分の取消しの訴えに係る原告適格について判断した最高裁昭和60年(行ツ)41号平成元年4月13日第一小法廷判決・裁判集民事156号499頁の射程が鉄道事業法16条1項に基づく運賃上限変更認可処分の取消しの訴えに及ばないと判断した下級審判決が存在し、当該判決は、当事者双方の主張立証活動を踏まえ、平成16年法律第84号による行政事件訴訟法の改正によって新設された同法9条2項に基づく検討をした上で上記判断に至っていることからすれば、上記最高裁判決の存在をもって鉄道利用者に審査請求人適格はないとの結論が当然に導かれるものとはいえず、その審査請求人適格について判断するためには、上記最高裁判決の射程や上記下級審判決の位置付けを含め、行政事件訴訟法9条2項に基づく検討をするべく、審査請求人との間の主張のやり取り等による審理手続を行うことが必要であったというべきであるから、上記審査請求は行政不服審査法24条2項にいう「不適法であって補正することができないことが明らかなとき」に該当するとはいえないとして、上記裁決を取り消した事例