AI概要
【事案の概要】 石綿含有建材の卸売等を業とする被告の和歌山営業所において、昭和45年11月から平成11年1月まで約28年間にわたり建材の配送作業等に従事したCが、石綿粉じんにばく露して石綿肺(じん肺管理区分4)にり患し、令和2年1月6日に87歳で死亡した。Cの相続人である原告ら(妻及び子)が、被告に対し、安全配慮義務違反(債務不履行)又は不法行為に基づき、各1925万円及び遅延損害金の損害賠償を求めた事案である。Cは被告の専属下請業者として2トントラックで建材を配送しており、倉庫内での石綿含有建材の積込み・搬入・在庫整理作業や、工事現場への配送時に石綿粉じんにばく露していた。被告はCの石綿肺り患自体や業務起因性、雇用関係の存在を争った。 【争点】 主な争点は、①Cが石綿肺にり患していたか、②Cが被告の業務により石綿肺にり患したか(業務起因性)、③被告の安全配慮義務違反等の有無、④損害額の4点である。特に被告は、HRCT検査が行われていないため石綿肺の鑑別診断ができないこと、Cの石綿粉じんばく露量は少なかったこと、Cは労働者ではなく業務委託先にすぎないこと、及びCの喫煙歴による過失相殺を主張した。 【判旨】 裁判所は原告らの請求を一部認容した。争点①について、複数の医師による胸部X線・CT画像の読影所見(両側胸膜プラーク、粒状影、不整形陰影等)及び労災認定の経緯から、Cが管理区分4相当の石綿肺にり患していたと認定した。争点②について、約28年間の倉庫内作業における相当程度の濃度の石綿粉じんばく露及び工事現場での高濃度ばく露の事実を認め、被告の業務と石綿肺り患の因果関係を肯定した。争点③について、Cは被告の指揮監督下で従業員と同様の勤務時間・拘束を受け、定額の報酬を得ていたことから実質的に労働者と同様の立場にあったと認定し、被告は遅くとも昭和50年4月頃には石綿関連疾患の危険を予見でき、防じんマスク着用の指導義務等を負っていたのにこれを怠ったとして安全配慮義務違反を認めた。損害については、入通院慰謝料及び死亡慰謝料を合計2500万円と認めつつ、Cの50年間にわたる喫煙歴が症状増悪に寄与したとして1割の過失相殺的減額を行い、弁護士費用225万円を加えた合計2475万円(原告ら各1237万5000円)を認容した。