強盗殺人未遂、銃砲刀剣類所持等取締法違反
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告人は、令和6年5月29日午後11時38分頃、埼玉県川口市内の路上に停車中のタクシー内で、運転手(当時72歳)から現金を強奪し乗車料金の支払を免れようと考え、背後から自動式拳銃を突き出し「金出せ。」と脅迫した。運転手がこれに応じなかったため、殺意をもって拳銃1発を左胸部に発射し、加療約3か月間を要する左横隔膜損傷・胃損傷等の傷害を負わせたが、殺害の目的は遂げなかった。被告人は乗車料金2300円の支払を免れる財産上の利益を得たものの、現金強奪は未遂に終わった。併せて、同拳銃1丁を実包3発と共に携帯所持した銃刀法違反にも問われた。 【争点】 弁護人は、被告人は運転手の態度への怒りから殺害しようとしたもので強盗目的はなかったと主張した。裁判所は、被害者が停車直後に「金出せ。」と言われた旨を一貫して供述しており、直後の110番通報と公判供述が合致すること、約2か月間意識不明の状態が続いた後も記憶に変容は認められないことから、被害者供述の信用性を認めた。一方、被告人の「苦情を無視されたことへの怒りから銭金の問題じゃねえと言った」との供述については、ドラレコ映像に複数回苦情を伝えた状況がないこと、拳銃の安全装置を事前に解除し取出後16秒で発射しており謝罪目的とは考え難いことから信用できないと判断し、強盗目的を認定した。 【判旨(量刑)】 裁判所は、逃げ場のない狭いタクシー車内で安全装置を解除した拳銃を接着させて発射した態様の危険性、被害者が肺・横隔膜・胃・小腸・横行結腸等を損傷し3回の心停止を起こすなど生命が現実の危険にさらされたこと、死亡に至らなかったのは枢要な血管を損傷しなかった幸運に過ぎないことを重視した。前科のない単独犯の強盗殺人未遂の裁判例と比較しても、拳銃を実際に発射したタクシー強盗という類型は最も重い群に属すると評価し、2日後に出頭を告げた事情を考慮しても、懲役21年(求刑懲役23年)を言い渡した。