損害賠償請求、各共同訴訟参加控訴事件
判決データ
- 事件番号
- 令和4(ネ)4601
- 事件名
- 損害賠償請求、各共同訴訟参加控訴事件
- 裁判所
- 東京高等裁判所
- 裁判年月日
- 2025年6月6日
- 裁判官
- 伊藤正晴
- 原審裁判所
- 東京地方裁判所
- 原審事件番号
- 平成24(ワ)6274
AI概要
【事案の概要】 東京電力の株主である一審原告らが、福島第一原子力発電所事故(平成23年3月11日)に関し、東京電力の取締役であった一審被告ら5名に対し、大規模地震に伴う津波による過酷事故の発生を予見し得たにもかかわらず、必要な安全対策を怠った善管注意義務違反等の任務懈怠があるとして、会社法847条3項に基づく株主代表訴訟として、連帯して損害金22兆円(控訴審で23兆4000億円に拡張)の支払を東京電力に対してするよう求めた事案である。原審(東京地裁)は、一審被告a5を除く4名について善管注意義務違反を認め、13兆3210億円の賠償を命じたが、一審被告a5については因果関係を否定して請求を棄却した。一審被告ら及び一審原告らの双方が控訴した。 【争点】 主な争点は、(1)一審被告らに福島第一原発の10m盤を超える津波が襲来することについての予見可能性(本件予見可能性)があったか、(2)予見可能性が認められる場合の善管注意義務違反の有無、(3)リスク管理体制構築義務違反の有無である。特に、政府の地震調査研究推進本部が公表した長期評価の見解及びこれに基づく津波試算結果が、本件予見可能性を基礎付ける合理性・信頼性ある根拠となるかが中心的に争われた。 【判旨】 東京高裁は原判決を変更し、一審原告らの請求を全部棄却した。まず、予見可能性が認められる場合に取締役が行うべき措置は、対策工事完了までの原発の運転停止を含む指示であるとし、その正当性を主張し得る程度に合理性・信頼性のある根拠が必要であるとした。その上で、長期評価の見解について、三陸沖北部から房総沖の海溝寄りの領域全体で津波地震が発生し得るとする部分は、過去の津波地震が全て三陸沖北部で発生しているという事実との整合性に欠け、この見解の根拠とされた400年周期論も十分な根拠を有するものとはいえないなど、運転停止の指示を正当化し得る程度の合理性・信頼性を有していたとは認められないと判断した。また、確率論的津波ハザード解析の結果等も本件予見可能性を基礎付けるものとはいえないとした。結論として、一審被告らに本件予見可能性は認められず、善管注意義務違反による損害賠償責任を負わないとした。ただし、一審被告らは本件事故について大きな社会的責任を負うべき立場にあり、今後は取締役の予見可能性につきより抽象化した基準で一層重い責任を課す方向で検討されるべきであるとの付言がなされた。