AI概要
【事案の概要】 本件は、原告(ツールゲン インコーポレイテッド)が、被告ら(ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア外2名)が特許権者である「RNA依存性標的DNA修飾およびRNA依存性転写調節のための方法および組成物」に関する特許(特許第6692856号)について、無効審判請求を不成立とした審決の取消しを求めた事案である。原告は、CRISPR/Cas9システムの真核細胞への適用は第1優先基礎出願の出願書類に記載されておらず、パリ条約に基づく優先権主張の利益を享受できないとして、拡大先願(特許法29条の2)による無効を主張した。 【争点】 主な争点は、本件特許が第1優先基礎出願(2012年5月25日)に基づくパリ条約による優先権主張の利益を享受できるか否かである。具体的には、(1)PAM配列に関する記載の有無と周知性、(2)核局在化シグナル(NLS)及びコドン最適化の周知性、(3)真核細胞への適用に関する障壁の存在と過度の試行錯誤の要否、(4)真核細胞での実施例がないことの影響が争われた。 【判旨】 知的財産高等裁判所は、請求を棄却した。裁判所は、第1出願書類にはCRISPR/Cas9システムを真核細胞内の標的DNAに適用するという技術的思想が開示され、優先日当時の周知技術と組み合わせれば実施可能な程度に具体的記載がされていたと認定した。PAM配列については、優先日前の多くの文献で言及されており当業者の技術常識の範疇に属すると判断した。NLS及びコドン最適化についても周知慣用技術であり、かつCRISPR/Cas9システムに必須でもないとした。真核細胞への適用の障壁については、発明者の論文発表後短期間に多くの研究者がゲノム編集に成功した事実から、過度の試行錯誤を要するものではないと認定した。以上から、本件発明は優先日に出願されたものとみなされ、拡大先願の無効理由は成り立たないとした。