損害賠償等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 元大相撲力士の原告が、所属していた相撲部屋の親方(被告K)及び公益財団法人日本相撲協会(被告協会)に対し、損害賠償等を請求した事案である。原告は、令和3年1月場所を前に新型コロナウイルス感染への不安を理由に休場を申し入れたが認められず引退を余儀なくされたとして慰謝料300万円の連帯支払を求めたほか、被告親方に対し、賞味期限切れの肉の食事強要、汗拭き乾燥費用の自己負担強制、兄弟子による私的制裁(「かわいがり」)の放置、怪我・病気時の稽古休止不許可を理由とする慰謝料200万円、及び養成員場所手当から無断控除された積立金等8万4000円の不当利得返還を請求した。 【争点】 主な争点は、(1)コロナ不安を理由とする休場を認めなかった被告協会の不法行為の成否、(2)被告親方が原告の休場を被告協会に申し入れなかったことの不法行為の成否、(3)傷んだ肉の食事強要の有無、(4)汗拭き乾燥費用負担の不法行為性、(5)私的制裁としての「かわいがり」放置の不法行為の成否、(6)怪我等を理由とする稽古休止不許可の不法行為の成否、(7)損害額、(8)積立金等控除の不当利得の成否、(9)消滅時効の成否である。 【判旨】 裁判所は原告の請求をいずれも棄却した。争点(1)(2)について、被告協会の制度上、診断書提出による休場や帰国休場扱い(養成員場所手当は不支給)が可能であり、被告親方もこれらの選択肢を原告に説明していたと認定した。原告は既に令和2年秋頃から引退を具体的に考え自動車教習所に通い始めており、引退は既定路線であったとして、出場か引退かの二者択一を強制された事実は認められないと判断した。争点(3)については、原告のLINE投稿が食事強要と整合しないこと等から供述の信用性を否定した。争点(4)は、コインランドリー利用は天候不良時に限られ頻度も低く不法行為とは評価できないとした。争点(5)は、原告供述を裏付ける客観的証拠がなく、日時についても連合稽古で部屋不在であった事実と矛盾する等として認定できないとした。争点(6)も供述の核心部分に矛盾があり採用できないとした。争点(8)は、積立金等は力士同士の互助目的で管理・支出されており被告親方の利得とは認められないとした。