AI概要
【事案の概要】 信託銀行の証券代行営業部次長・部長であった被告人が、取引先重要情報管理票の決裁を通じて株式公開買付け(TOB)の実施に関する未公表の重要事実を知り、3銘柄についてインサイダー取引を行った事案である。被告人は、令和4年12月から令和6年8月にかけて、B社株9500株(約882万円)、G社株3900株(約319万円)、K社株1万2500株(約2009万円)の合計2万5900株を代金合計約3210万円で買い付け、売買差益として約2933万円の利益を得た。弁護人は、信用取引の場合には売付代金全額ではなく売買差益の範囲内に追徴額を減額すべきと主張した。 【判旨(量刑)】 裁判所は、金融商品取引法198条の2の必要的没収・追徴の趣旨について、インサイダー取引によって取得した不正財産を残らずはく奪し、さらなる犯罪行為や経済行為への再投資を防止して健全な金融商品市場の確保を図るものと判示した。同条は没収・追徴の対象を犯行により得た「利益」ではなく「財産」と規定しており、取得費用等は原則として考慮しないと解すべきであるとした。信用取引の場合も、購入原資が借入金であるというだけで売買差益を追徴対象とする扱いは同条の趣旨に沿わず、全財産の追徴が過酷な結果をもたらす特段の事情がある場合に限り同条1項ただし書を適用すべきとした。本件では売付代金合計6143万790円と売買差益との差額が約3210万円に上るものの、懲戒解雇や退職金喪失等の事情を踏まえても過酷とはいえないとして、売付代金全額の追徴を命じた。量刑については、幹部職員としての立場を悪用し相応の規模で買い付けた悪質な犯行である一方、自首して反省の態度を示していること、前科がないこと等を考慮し、懲役2年(執行猶予4年)及び罰金200万円とした(求刑同旨)。