窃盗、電子計算機使用詐欺、覚醒剤取締法違反被告事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告人は、インターネット上の掲示板で知り合った氏名不詳者らから、他人名義のキャッシュカードを使用して現金自動預払機(ATM)から現金を引き出す「出し子」の役割を引き受けた。被告人は、この仕事が特殊詐欺等の犯罪行為によって得られた現金を引き出すものである可能性を認識していた。令和3年10月から12月にかけて、架け子が被害者らに還付金等の名目で電話し、振込送金の操作と気付かせないままATMを操作させて被告人らの管理する口座に合計773万円余りを振込送金させる電子計算機使用詐欺を行い、被告人はその直後にATMから合計722万円余りの現金を引き出した。第1審は電子計算機使用詐欺を含む全罪について懲役4年としたが、控訴審は電子計算機使用詐欺の共謀を否定して無罪とし、その余の罪で懲役3年6月とした。 【争点】 出し子である被告人が、電子計算機使用詐欺の行為態様を具体的に把握していなかった場合でも、架け子との間で同罪の共謀共同正犯が成立するか。 【判旨(量刑)】 最高裁は、職権により原判決を破棄し、第1審の懲役4年の判決を維持した。被告人が引き出す現金が詐欺等の犯罪に基づいて口座に振込送金されたものであることを十分に想起させる事実関係の下では、本件のような態様の電子計算機使用詐欺も被告人が想定し得る犯罪の範囲に含まれていたといえ、被告人は電子計算機使用詐欺に関与する可能性を認識していたと推認できるとした。そして、被告人が犯行当日午前9時頃からATM付近で待機し、氏名不詳者らも被告人の待機・引出しを前提として犯行に及んでいたことから、暗黙のうちに意思を通じ合ったと評価でき、また被告人の役割は犯行目的達成上極めて重要であったとして、共謀の成立を認めた。補足意見(平木裁判官)は、出し子の未必的認識として、うそをつき人を欺いてATMを操作させ振込送金させるという中核的行為態様の認識があれば足りるとした。
裁判要旨
還付金等を受け取ることができる旨誤信させられていた者に電話で指示して、振込送金の操作であると気付かせないまま、現金自動預払機で振込送金する操作を行わせ、被告人らの管理する預貯金口座の残高を増加させる電子計算機使用詐欺において、被告人が氏名不詳者らから依頼を受けて同口座のキャッシュカードを所持して現金自動預払機付近で待機し、氏名不詳者らから電話で指示があれば直ちに同キャッシュカードを使用して現金自動預払機から現金を引き出し、報酬を差し引いた残りを回収役に交付したこと、被告人が特殊詐欺等の犯罪行為によって得られた現金を引き出すものである可能性を認識していたことなどの本件事実関係の下では、被告人と氏名不詳者らとの間で、電子計算機使用詐欺の共謀が認められる。 (補足意見がある。)
参照法条
刑法60条、刑法(令和4年法律第67号による改正前のもの)246条の2