AI概要
【事案の概要】 被告人は「A」の屋号で中古自動車販売業を営んでいた者である。(1)友人Bに対し、ランドクルーザープラドをオークションで落札すると偽り、Bの妻Cを介して430万円をだまし取った、(2)株式会社I代表取締役Jに対し、従業員Kを通じてヴェルファイアをオークションで落札すると偽り、328万円をだまし取った、との詐欺2件で起訴された。被告人は代金受領後いずれの車両も納車できず、他人から借りた車を納車と偽って引き渡すなどしていた。被告人は、オークションでの出品価格を告げたことはなく、金額は諸費用・利益込みの売買代金として提示したものであり、受領時点では数か月内に納車するつもりがあったと弁解した。 【争点】 (1)被告人が公訴事実記載の欺罔文言を述べたか(欺罔行為の有無)、(2)詐欺の故意があったか。検察官は、被告人がオークションでの落札価格であるかのように金額を告げて代金を詐取したと主張し、被欺罔者とされるB・C及びKの供述を証拠として求刑懲役3年6月を求めた。弁護人は、被告人は欺罔文言を述べておらず、自転車操業状態ではあったが納車意思はあったと主張した。 【判旨(量刑)】 無罪。裁判所は、被欺罔者B及びKの供述にはいずれも看過し難い変遷があると指摘した。Bについては、430万円がオークション出品価格か売買代金かという欺罔行為の核心部分で捜査段階と公判段階の供述が変遷しており、検察官が調書を誤って作成したとは考えられないとした。Kについても、328万円で落札済みと聞いて入金したのか、未落札の前提で入金したのかという点で捜査・公判間に実質的に異なる供述があり、勘違いでは説明できないとした。また、B・Kいずれも被告人に暴力を振るった事実があり、自らの立場を取り繕うための虚偽供述の動機が認められるとした。一方、被告人の弁解は明確な変遷がなく一応の合理性があり、同時期のUとの取引では実際に納車が完了していたことも踏まえ、金銭受領時点で騙す意思があったとする認定はできないとした。以上から、各公訴事実について犯罪の証明がないとして刑訴法336条により無罪を言い渡した。