行政処分取消等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 両下肢機能全廃等により身体障害者手帳1級の交付を受け、市町村民税非課税世帯に属する被上告人が、障害者総合支援法に基づき居宅介護に係る介護給付費の支給決定を求める申請をしたところ、65歳に達したことを理由に要介護認定申請を求められ、これに応じなかったため、市町村(上告人)が介護保険サービスとの調整に必要な介護給付の量を算定できないとして申請を却下した事案である。被上告人は、本件却下処分の取消し、支給決定の義務付け及び国家賠償法に基づく損害賠償を求めた。 【争点】 障害者総合支援法7条の介護保険優先原則の下で、65歳に達した障害者が要介護認定申請をしないまま自立支援給付申請をした場合に、市町村が介護給付との調整ができないことを理由として申請を却下した処分に裁量権の逸脱・濫用があるか。具体的には、市町村民税非課税世帯の障害者が介護保険サービスの利用者負担を負うことになる不均衡を理由に処分を違法とした原審の判断の当否が問われた。 【判旨】 最高裁は原判決を破棄し、東京高裁に差し戻した。まず、支給量に関する判断は市町村の合理的裁量に委ねられていると解した上で、総合支援法7条は要介護認定の有無にかかわらず介護給付が優先される原則を定めたものであり、介護給付の量を算定するには要介護状態区分の認定が必要であるところ、要介護認定申請なしに市町村がその調査を行うことは法令上予定されていないとした。そして、原審が市町村民税非課税世帯と境界層該当世帯との不均衡を理由に処分を違法としたことについて、利用者負担は法令上当然に予定されており、支援措置事業の有無に左右されるものではなく、所得金額のみで不均衡が生ずるともいえないとして、原審の判断を否定した。もっとも、具体的事情によっては要介護状態区分の認定を経ずに介護給付の量を算定できる場合もあり得るとし、その点の審理を尽くさせるため差し戻した。
裁判要旨
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(令和4年法律第76号による改正前のもの)20条1項に基づく介護給付費の支給決定に係る申請を却下する処分がされた場合において、次の⑴~⑷など判示の事情の下では、上記処分が違法であるとした原審の判断には、市町村の裁量権に関する法令の解釈適用を誤った結果、受けることができる介護給付のうち自立支援給付に相当するものの量を算定することができないとした市の判断が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められるか否かについて審理を尽くさなかった違法がある。 ⑴ 上記申請をした者は、上記処分当時、両下肢の機能の全廃及び両上肢の機能の著しい障害により、1級の身体障害者手帳の交付を受けていた。 ⑵ 上記の者は、上記処分までに、障害支援区分4の認定を受けた上、障害福祉サービスの種類を居宅介護、支給量を身体介護月45時間及び家事援助月25時間とする支給決定を受けていた。 ⑶ 上記申請は、障害福祉サービスの種類及び支給量について、上記支給決定と同じ内容の支給決定を求めるものであった。 ⑷ 上記の者は、上記処分当時、65歳に達していたが、介護保険法27条1項に基づく申請をしていなかった。
参照法条
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成26年法律第83号による改正前のもの)7条、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(令和4年法律第76号による改正前のもの)20条1項、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(令和4年法律第76号による改正前のもの)22条1項、7項、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行令(平成27年政令第138号による改正前のもの)2条