殺人被告事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 昭和61年3月19日夜、福井市内の団地において、当時15歳の被害者が灰皿で頭部を殴打され、電気カーペットのコードで首を絞められ、包丁で顔面・頸部・胸部等をめった突きにされて殺害された事件(福井女子中学生殺人事件)の再審控訴審である。一審(福井地裁)は、主要関係者6名の供述の信用性を否定して被告人を無罪としたが、確定審控訴審(名古屋高裁金沢支部)は主要関係者供述の信用性を肯定し、心神耗弱を認定した上で懲役7年の有罪判決を言い渡し、同判決が確定した。被告人が2度目の再審請求を行い、再審開始決定が確定したことに基づく再審公判において、一審の無罪判決が維持され、検察官がこれを不服として控訴した。 【争点】 被告人の犯人性。被告人の自白や明らかな物的証拠はなく、犯行を直接目撃した者もいない間接事実型の証拠構造であり、主としてB・H・J・F・D・Cの6名の主要関係者供述が間接証拠とされた。検察官は、これらの供述により被告人が犯行推定時刻頃に現場付近にいたこと、血痕の付着、犯行告白等の間接事実が認定できると主張し、弁護人は、Bが自己の刑を軽くするために被告人犯行説をでっちあげ、捜査に行き詰まった警察がBの供述にすがり付いて主要関係者らに誘導を伴う取調べを行った結果、虚偽の供述が形成されたと主張した。 【判旨(量刑)】 控訴棄却(無罪維持)。当裁判所は、Bが自己の刑事事件について有利な量刑を得る等の利益を図るために被告人が犯人であるとの虚偽供述を行い、捜査に行き詰まった捜査機関がB供述に基づく誘導等の不当な働きかけを他の主要関係者に行った結果、B供述に沿う供述が形成された合理的疑いが払拭できないと判断した。Bは減刑や移監中止等の利益と引き換えに供述しており、供述内容にも重大な変遷が認められた。他の主要関係者もBへの迎合動機があり、客観的裏付けに乏しかった。さらに、確定審検察官が「夜のヒットスタジオ」の放送日時に関する捜査報告書の重大な誤りを是正せず、被告人から正しい事実関係を前提とした主張・立証の機会を奪った不公正な訴訟活動についても厳しく指弾し、刑事司法全体に対する信頼を揺るがせかねない深刻なものであると断じた。被告人を無罪とした原判決は正当であり、事実誤認はないとして控訴を棄却した。