金融商品取引法違反
判決データ
AI概要
【事案の概要】 A証券株式会社の幹部であった被告人ら5名が、同社が提供するブロックオファー取引(大口株主から株式を買い付け、個人投資家に売り付ける取引)の円滑な実施等を目的として、令和元年12月から令和3年4月までの約1年4か月の間に、東京証券取引所に上場されていた合計10銘柄の株券について、自己勘定で大量の買い注文を入れるなどの方法により違法な安定操作を行ったとして、金融商品取引法違反(安定操作罪)に問われた事案。被告人A1(D4部部長)は10件全てに関与し、被告人A2(副社長執行役員)が1件、被告人A3(D2本部長)が2件、被告人A4(D5部部長)が4件、被告人A5(D2副本部長)が1件にそれぞれ関与した。 【争点】 弁護人らは、(1)大引けだけに参加する行為は安定操作罪の実行行為に該当しない、(2)相場安定目的の「一定の範囲」には具体的株価の特定が必要である、(3)安定操作罪の故意・共謀が認められないなどとして、全被告人の無罪を主張した。特に安定操作罪の成立範囲について、終値のみを対象とする行為が「相場を安定させる」行為に該当するかが争われた。 【判旨(量刑)】 裁判所は、安定操作罪の趣旨は自然の需給関係による相場形成を保護することにあり、終値も同罪の「相場」に含まれると判示した上で、弁護人らの主張は安定操作罪の要件を不当に狭く解するものであるとして排斥し、全被告人を有罪と認定した。量刑については、証券会社幹部が高度かつ専門的な知識・経験を悪用した巧妙で悪質な犯行であり、証券市場への信頼を害したと指摘する一方、遵法精神やコンプライアンス意識が欠如したA証券の組織風土が犯行を許容・助長した背景を考慮し、被告人A1を懲役3年・執行猶予5年、被告人A2及びA3を各懲役2年6月・執行猶予5年、被告人A4を懲役2年・執行猶予4年、被告人A5を懲役1年6月・執行猶予3年とした(求刑:被告人A1につき懲役4年、A2・A3につき各懲役2年6月、A4につき懲役2年、A5につき懲役2年)。