損害賠償履行請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 阿蘇市の住民である被控訴人らが、当時の阿蘇市長(A市長)が違法な財務会計行為を行ったことにより阿蘇市が損害を被ったと主張して提起した住民訴訟の控訴審である。A市長は、阿蘇地域畜産クラスター協議会に対する補助金について、農業組合法人甲誠牧場の肥育牛舎建設事業に係る補助金の事故繰越をせず(財務会計行為①)、補助金全額を減額する変更交付決定(財務会計行為②)をした。甲誠牧場が阿蘇市に対して国家賠償請求訴訟を提起した結果、これらの行為は違法と認定され、阿蘇市は損害賠償金約8359万円等を支払った。被控訴人らは、阿蘇市がA市長に対する損害賠償請求権の行使を怠っていることが違法であるとして、地方自治法242条の2第1項4号に基づき、A市長への損害賠償請求権の行使を求めた。原審は被控訴人らの請求を一部認容し、控訴人(阿蘇市)が控訴した。 【争点】 主な争点は、①財務会計行為①及び②が住民訴訟の対象となるか、②国賠法1条2項の求償権の要件(故意・重過失)が普通地方公共団体の長に対する債務不履行等の損害賠償請求にも適用されるべきか、③A市長が本件交付決定に無効事由・取消事由がないと予見可能であったかである。 【判旨】 控訴棄却。控訴審は原判決を支持し、①本件住民訴訟の対象はA市長に対する損害賠償請求債権の行使を怠っていることであり、「財産の管理を怠る事実」に該当するため住民訴訟の対象となること、②普通地方公共団体の長については、会計職員等と異なり故意・重過失に限定する規定がなく、法は国賠法1条2項の趣旨を長に及ぼすことに慎重な態度を採っているため、一律に責任要件を故意・重過失に限定する解釈はできないこと、③A市長は打合せや回答書等を通じて、建設予定地が万五郎の土地であることや熊本県の認識を知り得る立場にあり、交付決定に無効事由等がないと予見することは十分に可能であったことを認定し、阿蘇市がA市長に対する約8359万円の損害賠償請求権の行使を怠っていることは違法であると判断した。