婚姻費用の合意無効確認請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 婚姻後別居した夫婦間で、平成29年1月に婚姻費用として月額16万円を支払う旨の合意(本件合意)が成立し、夫は令和4年8月まで毎月同額を支払っていた。妻は令和2年11月に婚姻費用分担審判を申し立て、家庭裁判所は夫の年収が合意時の前提より高額であったことを事情変更と認め、月額29万円への増額を命じた。妻はさらに、合意時に夫の年収について錯誤があったとして、本件合意の無効確認を求める訴えを提起した。第1審は確認の利益を欠くとして却下したが、原審(控訴審)は確認の利益を認めて差し戻した。 【争点】 婚姻費用の分担に関する夫婦間の合意(婚姻費用合意)について、その無効確認を求める民事訴訟に確認の利益が認められるか。原審は、婚姻費用合意が有効である限り家庭裁判所は事情変更前の期間について異なる分担額を命じられないとして確認の利益を肯定したが、最高裁はこの判断の当否を検討した。 【判旨】 最高裁は原判決を破棄し、被上告人の控訴を棄却した。婚姻費用の分担義務は夫婦の収入や生活状況等に応じて変動し得るものであり、婚姻費用合意によって固定されるものではなく、適時に新たな形成があり得る。婚姻費用分担審判の手続において婚姻費用合意の効力が争われた場合、家庭裁判所は合意の存否・効力・内容のみならず一切の事情を踏まえて分担内容を新たに形成する審判をすることができる。民事訴訟で合意の有効性のみを確認することは、家庭裁判所による適時の形成を遅滞させるおそれがあり、紛争の直接かつ抜本的な解決のために最も適切かつ必要であるとはいえない。したがって、婚姻費用合意の無効確認を求める訴えは確認の利益を欠き不適法である。
裁判要旨
夫婦間における婚姻費用の分担の内容を定める合意の無効確認を求める訴えは、確認の利益を欠くものとして不適法である。
参照法条
民法760条、民訴法134条の2、家事事件手続法39条、家事事件手続法別表第2の2の項