AI概要
【事案の概要】 原告は、物流機器メーカーである被告(株式会社ダイフク)に平成30年4月から令和5年4月まで勤務し、在職中に物品搬送設備に関する4件の職務発明(本件各発明)を他の共同発明者とともに完成させた。被告は社内の「発明考案に関する規定」(本件規定)に基づき出願報奨金等を支払ったが、原告はこれを不十分として、特許法35条4項に基づく相当の利益として5775万円及び遅延損害金の支払を求めた。原告は、本件各発明に係るシステムが搭載された半導体搬送設備の売上高1100億円を基礎に、超過売上高率50%、仮想実施料率5%、発明者貢献度10%、発明寄与率70%、共同発明者間寄与率30%を乗じて算定した。 【争点】 (1) 本件規定により対価を支払うことが不合理なものであるか(争点1)。原告は、本件規定が従業者に十分に周知されておらず、退職後は閲覧もできなかったこと、実績報奨金の具体的基準である本件細則が開示されていなかったこと、報奨金額が本来の相当対価と著しく乖離していること、退職者が報奨金決定に意見を述べる機会がないことを主張した。被告は、規定は社内システムで常時閲覧可能であり、新人研修で説明し、改定時には全従業員に意見募集を行い、労働組合との協議を経て策定したもので合理的であると反論した。 (2) 本件規定によらない場合の特許法35条7項の「相当の利益」の額(争点2)。 【判旨】 請求棄却。裁判所は、争点1について、本件規定及び本件細則は不合理とはいえないと判断した。その理由として、①被告は平成28年の特許法改正及び本件指針の公表を受け、労働組合代表者と協議を行い、規定内容を説明し質疑応答にも応じたこと、②本件規定及び本件細則は社内システムに常時掲載され、毎年の新人研修でも説明されており周知措置として合理的であること、③本件細則4への改定時には全従業員に意見募集を行い、原告自身も賛同意見や提案を提出し被告がこれに回答していたこと、④実績報奨金の審査は客観的指標に基づく数値化評価であり、発明者が確認できる仕組みが整備され意見聴取の機会も確保されていることを挙げた。原告主張の対価額の妥当性についても、特許法35条5項の不合理性判断に対価額の多寡が当然に含まれるかは疑問であり、本件細則は経済的価値を多面的に評価して段階的に報奨金を支払う仕組みであって不合理とはいえないとした。争点1の判断により本件規定の適用が排除されない以上、特許法35条7項による請求は理由がなく、また既発生分の報奨金は弁済済みであるとして、原告の請求をいずれも棄却した。