AI概要
【事案の概要】 発達障害(自閉症スペクトラム障害・ADHD)のある公立小学校の女子児童(原告)が、小学3年生・4年生時(平成30年度・令和元年度)に同級生2名(B・C)からいじめを受けたことにつき、学校教員らおよび市教育委員会職員らがいじめに対する適切な調査・措置を怠ったと主張し、学校・教育委員会の設置者である市(被告)に対し、国家賠償法1条1項に基づき慰謝料等165万円の損害賠償を求めた事案である。いじめ行為として、体育時間中のトラブル(本件出来事1)、遊びの誘いを遮る「こそこそ話」(本件出来事2)、交換ノートの名前塗りつぶし(本件出来事3)、靴への小石・小枝の混入(本件出来事4)の4件が認定された。原告は令和元年6月に「自殺したい」と紙に記載し、同年8月に重大事態として調査が開始された。 【争点】 主たる争点は、(1)本件小学校教員らおよび教育委員会職員らの対応等に国賠法1条1項の違法性(注意義務違反)が認められるか、(2)損害の発生・数額・因果関係である。原告は、教員らがいじめに対する認識不足・組織的対応の欠如・外部専門家との連携不足・発達障害を踏まえた対応の不足等の注意義務違反があったと主張した。被告は、各出来事に対し十分な指導・支援・外部連携を行い注意義務を尽くしたと反論した。いじめ重大事態調査報告書が学校・教育委員会の対応に種々の問題点を指摘していることと法的義務違反の関係も争われた。 【判旨】 請求棄却。裁判所は、教員らは各出来事につき発達障害の特性を踏まえながらいじめの調査・再発防止措置をとったと認定した。出来事1では即日認識し聴取・謝罪指導を行い原告も納得、出来事2では個別聴取とB・Cへの指導を継続、出来事3では聴取・内省指導・謝罪の場の設定に加え自殺願望への対応・専門家派遣申請を実施、出来事4では全児童からの聴取・緊急道徳授業・保護者会開催・加害者特定後の指導・謝罪・重大事態報告を行った。教育委員会もスクールソーシャルワーカー派遣調整や適時の指導助言を行った。調査報告書の指摘は再発防止に向けた重要な提言ではあるが民事責任の所在を明らかにするものではなく、各問題点を個別に検討しても法的義務違反を肯定するには至らないと判断し、注意義務違反を否定した。