社会福祉法違反被告事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 社会福祉法人の理事長であった被告人が、同法人の運営権譲渡に関し、コンサルティング業を営むAから不正の請託を受けた社会福祉法違反の事案である。被告人は平成24年から社会福祉法人の理事長を務めていたが、後継者不在等を理由に法人の運営を他者に譲ることを検討していた。令和3年6月、Aとの交渉において、Aから、定款等所定の手続の履践にかかわらず、6月中に理事3名をAの指定する人物に変更するよう請託を受けてこれを了承し、対価として総額1億3400万円の収受を約束した。実際に、候補者提案理事会を開催せず、評議員会の招集通知にも新理事選任の議題を記載しないまま、定時評議員会でAら3名を理事に選任し、Aから合計9400万円(6月29日に4400万円、7月26日に5000万円)の供与を受けた。その後、Aが法人預金を私的に引き出していたことが発覚し、法人は最終的に破産に至った。 【判旨(量刑)】 裁判所は、被告人を懲役1年6月・執行猶予3年に処し、9400万円の追徴を命じた(求刑:懲役2年6月)。量刑理由として、本件の不正の請託は社会福祉法人の理事選任手続規定に違反するものであり、法人の健全性や利用者の福祉を保護するための重要な手続規定への違背であると指摘した。請託に応じた結果、法人の健全性や利用者の福祉が実際に害されるという害悪が生じている点で違法性を軽視できないとした。一方、請託内容の主たるところは定款細則違反であり、当事者の認識も限定的で、それ自体が極めて悪質とまではいえないとした。対価9400万円は相当高額であるが、うち5000万円はAに貸し付けて未返済であり、実質的利益は4400万円にとどまる点も考慮した。被告人に前科前歴がなく、法人が既に破産して同様の事業に及ぶおそれがないことなどから、執行猶予を付すのが相当と判断した。