AI概要
【事案の概要】 被告人(柔道有段者の高齢男性)は、令和6年9月4日午前7時頃から同日午前7時56分頃までの間、北海道内の自宅において、妻である被害者(当時82歳)に対し、殺意をもってその頸部を背後から腕等で絞め付けるなどし、頸部圧迫による窒息死により殺害した殺人被告事件である。被告人は前夜、被害者に無断でパジャマを処分されたことに憤慨し、さらにトイレの汚れを非難されたことに逆上して謝罪を求め、被害者を床に押さえ付けた末に頸部を絞め付けるに至った。被害者には甲状軟骨上角の完全断裂等の重篤な損傷が認められた。弁護人は殺意を否認して傷害致死罪の成立を主張し、被告人も背後から首を絞めた事実はないと供述したが、裁判所は解剖医の鑑定結果や発見時のうつ伏せの体勢等から、背後から腕等で頸部を絞め付けた行為態様を認定し、未必の殺意を認めた。裁判員裁判により審理された。 【判旨(量刑)】 裁判所は、凶器を用いない家族間殺人既遂事案の量刑傾向を参考に検討し、被告人を懲役11年に処した(求刑懲役12年)。柔道有段者でありながら体格差のある被害者の背後から腕等を回し、甲状軟骨が完全に折れるまで頸部を絞め付け続けた殺害態様は相応に危険であると評価した。動機についても、パジャマの処分や謝罪拒否という理由で殺害に及ぶのは身勝手かつ理不尽であり悪質であるとした。被害者が「殺せ」と発言した点は売り言葉に買い言葉に過ぎず犯行決意への影響は限定的とされ、嘱託殺人罪ではなく通常の殺人罪の成立が認定された。強い殺意までは認められないものの、同種事案の中では比較的重い犯情と評価された。被告人は事実と向き合う様子がなく反省が見出し難いこと、遺族である二人の娘及び被害者の妹がいずれも厳しい処罰感情を示していることも量刑上考慮された。