損害賠償請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 菊池広域連合消防本部の職員であった亡Dが、先輩職員Eの長年にわたるパワーハラスメントにより精神疾患(反復性うつ病性障害)を発症して自殺したとして、Dの相続人である原告ら(妻及び子2名)が、被告(菊池広域連合)に対し、国家賠償法1条1項に基づき、合計約1億1849万円の損害賠償を求めた事案である。Eは約20年間にわたり、Dの24時間勤務明けに自宅を訪問して「反省会」と称する業務指導を行い、業務時間中に頻回に架電して業務知識のクイズを出し答えられないと叱責し、担当外の台帳整理作業を強いるなどの行為を繰り返していた。 【争点】 (1)Eの言動の国賠法上の違法性、(2)安全配慮義務違反の成否、(3)Eの言動と精神疾患の発症及び自殺との相当因果関係、(4)損害額、(5)ASD(自閉症スペクトラム障害)の特性を理由とする素因減額の可否。被告は、DがASDの特性を有しており精神疾患の主因はEの言動ではないと主張し、仮に因果関係が認められても自殺との間には相当因果関係がないと争った。 【判旨】 裁判所は、Eの各言動はいずれも業務上の優越的関係を背景とし、Dに強度の心理的負荷を与えるもので社会通念上許容される範囲を逸脱しており、国賠法上違法であると認定した。自殺の際に「お前を呪ってやる パワハラ、おどし」と記載したメモが残されていたこと等から、Eの言動と精神疾患の発症及び自殺との相当因果関係を肯定した。一方、主治医がDについてASDの特性が顕著と評価していたことを踏まえ、ASDの不安感受性の高さが精神疾患及び自殺に寄与したとして2割の素因減額を行った。損害額は、逸失利益約8023万円、死亡慰謝料2400万円等を認定し、素因減額・損益相殺後、原告A(妻)に3540万6828円、原告B・C(子)に各2414万8952円の支払を命じた。