AI概要
【事案の概要】 被告人は、令和6年11月9日頃、自宅で実母A(当時92歳)が死亡しているのを発見した。被告人は翌日未明、奈良市内の霊園にある自己所有の区画に、行政上の埋葬許可手続を一切経ることなく、棺桶にも入れず防腐措置も施さないまま、母親の死体をスコップで掘った穴に埋めた。その後、被告人は整地用具で土をならし、ホームセンターで購入した砂を敷くなどしたが、約1週間後に清掃業務員が土中から手首等の露出を発見し、110番通報に至った。弁護人は、自己所有の墓地区画への埋葬であり死体遺棄罪の「遺棄」に当たらないこと、及び故意の不存在を主張して無罪を主張した。 【判旨(量刑)】 裁判所は、死体遺棄罪における「遺棄」とは習俗上の埋葬等とは認められない態様で死体を放棄・隠匿する行為であるとの最高裁判例(令和5年3月24日第2小法廷判決)を引用し、本件の態様を検討した。棺桶に入れず防腐措置もない状態で浅い穴に埋めたことは、腐敗による衛生上の悪影響や死体露出の危険を容易に招来するものであり、一般的な宗教的感情を損なう処置と認定した。また、墓地埋葬法上の手続や霊園への相談を一切経ていないことも、死体の位置づけを不安定にし紛議を招くものとして、習俗上の埋葬等とは相容れない処置であるとの評価を支える事情とした。母親の遺言に基づく行為であるとの主張や土葬が現在も行われているとの指摘も、上記評価を覆すものではないとし、故意についても、父親の葬儀では火葬手続を履践していたこと等から認定した。量刑については、自己所有区画への埋葬であり無関係な場所への遺棄とは異なるものの、死体が損傷状態で露出しており宗教的感情を損なった程度は軽視できないとした。適切な埋葬が不可能であった合理的理由も見出しがたく、意思決定への非難も相応に厳しいとしつつ、反省状況や近年の前科がないことを考慮し、求刑懲役1年6月に対し、懲役1年2月・執行猶予3年を言い渡した。