殺人、銃砲刀剣類所持等取締法違反
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告人は、妄想症に罹患し、自宅付近を散歩する近隣住民2名から毎日のように「ぼっち」「きもい」などと悪口を言われているという妄想を抱いていた。令和5年5月25日午後、散歩中の同住民2名に対し、事前に購入・研磨していたボウイナイフ(刃体約30.2cm)で襲い掛かり、胸部等を多数回突き刺して立て続けに殺害した(第1・第2)。さらに、通報を受けて臨場した警察官2名に対し、ハーフライフル銃で至近距離から発砲して1名を射殺し、もう1名にも発砲した上、ナイフで刺突してとどめを刺して殺害した(第3・第4)。被告人は犯行後、私服警察官に遭遇しても冷静に対応し、母親に対して「ぼっちとばかにしたからやった」「警官に撃たれる前に撃った」と述べた。翌日未明に自ら投降した。弁護人は心神耗弱を主張したが、裁判所は起訴前鑑定(G鑑定)の信頼性を認め、完全責任能力を認定した。 【判旨(量刑)】 裁判所は、死刑を選択した。被告人は高い殺傷能力を備えたボウイナイフとハーフライフル銃の2つの武器を意のままに用いて、防御手段のない被害者4名を短時間で次々と殺害しており、強固な殺意に基づく残虐極まりない犯行であると認定した。妄想症の症状が第1・第2の犯行のきっかけとなったことは認めつつも、妄想の内容は悪口を言われているというものにとどまり、殺害を思い立たせるようなものではなく、凶行に及んだのは基本的に被告人自身の意思・判断によるとした。犯行前月にナイフを購入して刃を研ぎ、弟へのLINEで「いよいよ来るぞ」「とんでもないことになるぞ」と伝えていた点も指摘した。被告人のために酌むべき事情として、妄想症罹患が本人の責めに帰すべきものでないこと、未治療のまま長年苦しんでいたこと、更生可能性を一概に否定できないことを考慮したが、4名殺害という結果の重大性と態様の残虐性を前にして死刑の選択を回避すべき事情は見出せないと結論付けた。