AI概要
【事案の概要】 被告人は、令和4年9月11日夜、川崎市内のベトナム料理店で同僚らと誕生日の飲食をした後、カラオケ店(本件店舗)に移動して飲食していたところ、別の店から訪れた被害者A(当時57歳)と同僚X1との間で口論が発生した。被害者らが退店した後、被告人は、被害者らと再接触すれば暴力沙汰になる可能性を十分認識しながら、殺傷能力のある刃物を腰に携帯して一人で店を出て被害者らの移動方向に向かった。路上で被害者の仲間から空き瓶で頭部を殴られ、被害者から拳で顔面を殴られるや、被告人は右腰から刃物を取り出し、被害者の前胸部を1回突き刺した。刺創は心臓を貫通し肺にまで達する深さ約20センチメートルに及び、被害者は失血により死亡した。被告人は瀕死の被害者を放置し、凶器を隠匿して被害者の仲間を追いかけた。弁護人は殺意の不存在と正当防衛を主張したが、裁判所は、被告人が刃物と認識して相当な力で突き刺した事実から殺意を認定し、被害者らとの接触・攻撃を予期しながらあえて刃物を携帯して接近した経緯から侵害の急迫性を否定して正当防衛の成立を認めなかった。 【判旨(量刑)】 裁判所は、鋭利な刃物で被害者の前胸部を深さ約20センチメートルに達するほどの強い力で突き刺した行為は危険かつ悪質であり、被害者死亡という重大な結果が生じていること、遺族の処罰感情が厳しいこと、瀕死の被害者を放置して仲間を追いかけ凶器や着衣を処分するなど犯行後の情状も非常に悪いことを指摘した。他方、被告人が当初から被害者への加害を積極的に意図していたかは疑わしく、被害者側が先にいきなり瓶や拳で殴りかかったことが被告人の行為を招いた面があり、被害者側にも落ち度があることを認めた。同種事案(単独犯、けんか動機、刃物使用、示談なし、前科なし、突発的殺意)の量刑傾向の中で重い部類に属するとし、不自然・不合理な弁解を重ね、裁判所から質問されるまで被害者を思いやる言葉すら述べなかった反省の欠如も考慮し、求刑懲役16年に対し懲役14年を言い渡した。