不正競争防止法違反に基づく差止等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 原告(日本ジェネリック株式会社)は、被告(バイエル薬品株式会社)が製造販売する抗凝固薬「イグザレルト」(有効成分:リバーロキサバン)の後発医薬品(OD錠)の製造販売を計画する製薬会社である。原告は、被告が業界紙(日刊薬業)に令和2年12月から令和6年7月にかけて計6回掲載した謹告、及び厚生労働省の承認審査過程における被告の回答が、原告製品の製造販売行為が特許第4143297号(物質特許)を侵害するとの虚偽の事実の流布・告知に当たるとして、不正競争防止法2条1項21号に基づく差止め及び同法14条に基づく信用回復措置を求めた。 【争点】 主な争点は、(1)本件謹告の掲載が「他人の営業上の信用を害する虚偽の事実」の流布に当たるか、(2)厚労省に対する被告の回答が同様の告知に当たるか、(3)営業上の利益侵害のおそれの有無、(4)故意・過失の有無、(5)正当行為として違法性が阻却されるかである。特に、存続期間が延長された物質特許の効力が、普通錠とは剤型の異なるOD錠にも及ぶかという特許法上の論点(実質同一性)が背景にあった。 【判旨】 請求棄却。裁判所は、争点1について、本件謹告は原告製品に言及しておらず、剤型や用途等の構成にも触れていないことから、読者の普通の注意と読み方を基準とすれば、被告が特許権侵害に厳正に対処する方針を一般的に述べた情報提供・注意喚起にとどまり、特定の後発医薬品との関係で特許権の権利範囲についての見解を示すものとは理解できないとして、「他人の営業上の信用を害する」ものには当たらないと判断した。争点2について、医薬品の製造販売承認は行政処分であり自由競争の取引とは性質が異なること、厚労省等が承認審査で先発医薬品の特許権者等に説明を求めることは行政処分に先立つ情報収集行為であること、提供情報は一般に公開されないことから、被告の回答は「他人の営業上の信用を害する」ものとはいえないとした。以上により、その余の争点を判断するまでもなく、原告の請求をいずれも棄却した。