殺人、過失運転致傷、道路交通法違反
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告人は、令和5年12月10日午前4時9分頃、長野県佐久市内の道路において、普通貨物自動車を運転中、制限速度40km/hの道路を時速約72km/hで走行し、前照灯を下向きにしたまま前方不注視のまま漫然と進行した過失により、横断歩行中の被害者(当時85歳)に自車を衝突させ、多発性外傷(頭蓋骨骨折、頭蓋内損傷、肋骨骨折等)の重傷を負わせた。被告人は、被害者を救護せずに現場を離れ(救護義務違反・報告義務違反)、さらに、意識のない被害者を自車後部座席に運び入れた上、事故現場の血痕を水で洗い流し、ガラス片を回収するなど証拠隠滅を図った。その後、被害者を別の車に乗せ換え、自宅から約39.8km離れた山中まで連行し、ガードレール越しの急斜面の国有林内に放置して立ち去った。被告人はスマートフォンで「ひき逃げはばれない」「遺体遺棄は見つからない」「人を殺して隠す方法」「完全犯罪 成功例」等のキーワードを繰り返し検索していた。被害者は翌11日、多発性外傷及び低体温症により死亡した。 【判旨(量刑)】 争点は、被害者を山中に放置して立ち去った行為について殺人罪が成立するかであった。裁判所は、司法解剖を実施したF医師の供述に基づき、被害者の死亡推定時刻は12月11日午前0時前後頃以降であり、山中に放置された後も17〜18時間生存していたと認定した。被告人が救護に向けた行動をとっていれば救命は十分可能であった。裁判所は、被告人が被害者を車に運び入れて第三者による発見・救護の可能性を著しく減少させ、自らの事実上の支配下に置いたことにより、積極的に救護すべき法的義務を負っていたと判示した。その上で、寒冷な山中の急斜面に放置して立ち去った一連の行為は、殺人罪の実行行為に当たると認定した。故意については、被告人が被害者の生死を確認しようともせず、事故隠蔽に終始していたことから、少なくとも未必的な殺意があったと認めた。量刑においては、計画性がなく確定的殺意ではなかった点を考慮しつつも、交通事故の隠蔽のために被害者の生命を重大な危険にさらした行為は厳しい非難に値するとして、求刑懲役15年に対し、懲役12年(未決勾留日数420日算入)を言い渡した。