発信者情報開示命令の申立てについての決定に対する異議の訴え事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告(有限会社プレステージ)は、氏名不詳者がファイル共有ソフト「BitTorrent」を使用して被告が著作権を有するアダルトビデオの動画データを共有し、著作権(自動公衆送信権)を侵害したと主張して、電気通信事業者である原告(KDDI株式会社)に対し、プロバイダ責任制限法5条1項に基づき発信者情報の開示を求める申立てをした。東京地方裁判所が令和6年12月13日に一部開示を命じる決定をしたところ、原告が同決定に対し異議の訴えを提起した事案である。 【争点】 主な争点は、(1)権利侵害の明白性(BitTorrentで送信された個々のピースについて著作権侵害が成立するか、ピース単体で本件動画の表現上の本質的特徴を感得できるか、調査システムの信用性)、(2)BitTorrentによる通信が「特定電気通信」に該当するか(P2P方式の1対1通信が「不特定の者によって受信されることを目的とする」送信といえるか)の2点である。 【判旨】 裁判所は、原決定を一部変更し、一部の通信を除いて発信者情報の開示を命じた。まず、BitTorrentにおいてピースを送信した発信者は、著作物全体の自動公衆送信の実現における枢要な行為をしているといえるが、本件では調査会社が動画全体に相当するファイルを現実にダウンロードしたとは認められないため、動画全体についての権利侵害は認められないとした。他方、予備的主張について、個々のピースに対応する動画の一部(約2〜4秒)のうち、出演者の表情や動きが分かる構図で撮影されたものには表現上の創作性が認められるとして、動画の一部についての著作権侵害を肯定した。ただし、風景やロゴマークが映し出されているにとどまる2件の通信については、表現としてありふれたものであり創作性がないとして除外した。特定電気通信の該当性については、BitTorrentの仕組み上、発信者はトラッカーを通じて不特定の者からの求めに応じファイルを自動送信するものであるから、特定電気通信に該当すると判断した。