損害賠償請求、同反訴請求控訴事件
判決データ
- 事件番号
- 令和5ネ10060
- 事件名
- 損害賠償請求、同反訴請求控訴事件
- 裁判所
- 知的財産高等裁判所
- 裁判年月日
- 2024年1月10日
- 裁判官
- 清水響、浅井憲、勝又来未子
- 原審裁判所
- 東京地方裁判所
AI概要
【事案の概要】 故Aは、平成14年頃に出版社である被告から依頼を受け、武士道に関する書籍の原稿を執筆していたが、完成前の平成27年12月頃に死亡した。Aの妻である原告はAの権利義務を相続し、被告との間で出版に向けた交渉を行ったが、出版契約の締結には至らず、書籍は出版されなかった。本訴は、原告が、出版契約が締結されていないにもかかわらず被告がインターネット上で出版予告を行ったことが著作者人格権(公表権)及び自己決定権を侵害するとして、330万円の損害賠償を求めた事案である。反訴は、被告が、A又は原告との間で出版許諾契約が成立していたにもかかわらず原告が出版を拒絶したとして、債務不履行に基づく損害賠償142万1345円を求めた事案である。原審は本訴・反訴ともに棄却し、双方が控訴した。被告は控訴審で商法512条に基づく報酬請求及び契約締結上の過失に基づく損害賠償請求を選択的に追加した。 【争点】 1. Aと被告との間の出版許諾契約1の成否 2. 原告と被告との間の出版許諾契約2の成否 3. 著作者人格権(公表権)侵害及び自己決定権侵害の有無 4. 商法512条に基づく報酬請求権の存否及び消滅時効の成否 5. 契約締結上の過失に基づく損害賠償請求権の存否 【判旨】 控訴審は双方の控訴を棄却した上で、被告の当審追加請求(商法512条)を一部認容した。出版許諾契約1については、Aが未完成原稿の段階で出版許諾契約を締結する意向があったとは認めがたく、契約書等の書面も作成されておらず、経済的条件の協議もなかったことから、契約の成立を否定した。出版許諾契約2についても、原告が被告契約書案どおりに契約すると述べた事実はなく、校正作業への協力をもって黙示の意思表示があったとは評価できないとして、契約の成立を否定した。原告の公表権侵害の主張については、出版予告は著作物の内容そのものの公表ではないとして退け、自己決定権侵害についても、原告は自らの意思で出版を取りやめることができたとして請求を棄却した。商法512条に基づく報酬請求については、被告が出版社として営業の範囲内で原告のために行った作業(反訳費用26万円、組版費用26万2900円、校正費用13万7445円、装幀費用12万1000円の合計78万1345円)につき、相当報酬請求権を認めた。消滅時効については、報酬請求権の行使が可能となったのは出版が確定的に不可能となった令和2年12月17日以降であり、時効は完成していないとした。契約締結上の過失については、被告契約書案の提示後も契約内容は未確定であり、原告が被告に誤信させるような言動をした事実もなく、双方が譲歩しなかった結果であるとして、原告の損害賠償義務を否定した。