生活保護基準引下げ違憲処分取消等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、生活保護法による保護の基準(昭和38年厚生省告示第158号)の改定に伴い、鹿児島市及び出水市の福祉事務所長から平成27年4月1日に生活扶助の支給額を減額する保護変更決定を受けた原告ら(被保護者)が、同改定が憲法25条、生活保護法3条・8条に違反すると主張して、被告鹿児島市及び被告出水市に対し各処分の取消しを、被告国に対し国家賠償法1条1項に基づく損害賠償(各1万円)を求めた事案である。厚生労働大臣は、平成25年から平成27年にかけて3回に分けて生活扶助基準を改定したが、その内容は、基準部会報告書を踏まえた展開指数の適正化(ゆがみ調整)と、独自に算定した生活扶助相当消費者物価指数の下落率(マイナス4.78%)に基づく基準額の引下げ(デフレ調整)の2つから構成されていた。標準世帯(1級地-1)の生活扶助基準額は、改定前の月額16万2170円から改定後の月額14万5380円へと約10.4%減額された。 【争点】 主な争点は、(1)本件改定が憲法及び生活保護法に違反するか(ゆがみ調整・デフレ調整の各判断に裁量権の逸脱・濫用があるか)、(2)本件改定の国家賠償法上の違法性及び損害の有無であった。原告らは、デフレ調整について、物価変動を指標とする改定方式の採用自体が水準均衡方式と矛盾すること、物価勘案期間の始期を物価が突出して高かった平成20年としたこと、被保護世帯の消費構造を反映しないウエイトを用いたこと、ゆがみ調整との二重引下げとなること等を主張した。 【判旨】 裁判所は、ゆがみ調整については、展開指数の比較であり生活扶助基準額の引下げに直結するものではないとして、裁量権の逸脱・濫用を否定した。しかし、デフレ調整については複数の問題点を指摘し、違法と判断した。第一に、生活扶助相当CPIを用いて算定した本件下落率は一般国民の生活水準の低下の程度を示す指標とはいえず、統計等の客観的数値等との合理的関連性を欠くとした。第二に、物価勘案期間の始期を平成20年としたことについて、同年は前後数年間で突出した物価上昇がみられた年であり、同年の生活扶助基準が最低限度の生活の需要を満たすに十分であったと評価する専門技術的考察の具体的説明がないとした。第三に、本件下落率の半分以上をテレビ・パソコンの価格下落が占めるところ、被保護世帯のPC・AV機器への支出割合は総務省CPIのウエイトの3分の1を下回っており、被保護世帯の消費構造を適切に反映していないとした。第四に、ゆがみ調整により標準世帯の基準額が5.9%減額された上にデフレ調整を併せて行うことの必要性について検討した形跡がないとした。以上から、本件改定は生活保護法3条・8条2項に違反して違法であるとして、保護変更処分を全て取り消した。国家賠償請求については、精神的損害は処分取消しにより回復されるとして棄却した。