AI概要
【事案の概要】 本件は、「鋼管杭式桟橋」に関する特許(特許第5967862号、請求項1〜3)をめぐる審決取消請求事件である。特許権者である原告(JFEスチール)が、特許無効審判の審決のうち請求項1及び2に係る特許を無効とした部分の取消しを求め(第1事件)、無効審判の請求人である被告(日本製鉄)が、審判請求は成り立たないとした請求項3に係る部分の取消しを求めた(第2事件)。本件特許は、鋼管杭式桟橋において、地中部における発生曲率が大きい部分にのみ変形性能の高い鋼管杭を局所的に用い、全塑性モーメントに対応する曲率φpが一定の関係式を満足するものとすることで、建設コストの増加を抑えつつ耐震性能を確保する発明に関するものである。 【争点】 (1) サポート要件についての判断の誤りの有無(原告主張:請求項1・2もサポート要件を充足する/被告主張:請求項3もサポート要件を充足しない) (2) 進歩性についての判断の誤りの有無(被告主張:請求項3に係る発明は容易想到である) (3) 明確性要件についての判断の誤りの有無(被告主張:「発生曲率が大きい部分」の記載が不明確である) (4) 実施可能要件についての判断の誤りの有無(被告主張:軸力を考慮した場合に実施できない) 【判旨】 裁判所は、原告の請求を認容し(審決のうち請求項1・2に係る部分を取消し)、被告の請求を棄却した。 サポート要件について、裁判所は、バイリニアモデルを前提とした地震応答解析において、構造用鋼のヤング係数がどの鋼種でもほぼ一定値であるとの技術常識を踏まえると、鋼管杭に発生する曲率は、全部の変形性能を同じものとしても、地中部の一部のみの変形性能を高めたものとしても、ほぼ同じ結果が得られることが理解でき、このことは明細書記載の各図面の発生曲率の数値がほぼ一致していることからも裏付けられるとした。そのため、請求項1及び2の曲率条件であっても発明の課題を解決できると当業者は認識できるとし、審決の判断に誤りがあるとした。 進歩性について、周知技術や公知技術によっても、曲率φpを指標として地中部の発生曲率が大きい部分にのみ局所的に変形性能の高い鋼管杭を用いる構成は導出できず、当業者の試行錯誤の範囲内ともいえないとして、審決の判断に誤りはないとした。明確性要件及び実施可能要件についても、被告の主張をいずれも排斥した。