損害賠償(株主代表訴訟)事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、TOYO TIRE株式会社(本件会社)の株主である原告が、同社の子会社が建築基準法所定の国土交通大臣認定における技術的基準に適合しない建築用免震積層ゴムを販売していた問題について、本件会社の取締役であった被告ら4名に対し、株主代表訴訟として会社法423条1項に基づく損害賠償を求めた事案である。原告は、①被告らが平成26年9月19日に予定されていた免震積層ゴムの出荷停止を判断すべき善管注意義務を怠り、出荷を許可したこと(請求額3億円)、②免震積層ゴムの問題を国土交通省に報告し一般に公表する判断をすべき義務を怠ったこと(請求額1億円)を主張した。本件会社の子会社では、担当者が技術的根拠のない補正係数を用いて性能検査の合否判定を行い、大臣評価基準に適合しない免震積層ゴムを長年にわたり出荷しており、最終的に154棟の免震積層ゴム交換を要する事態となり、約466億円の特別損失を計上した。 【争点】 (1) 本件出荷の停止等に係る任務懈怠の有無 (2) 国土交通省への報告及び一般への公表に係る任務懈怠の有無 (3) 任務懈怠による損害の有無及び額 【判旨】 争点(1)につき、裁判所は、法令に係る技術的基準に適合しない製品の出荷について、取締役には出荷停止を判断すべき義務があるとしつつも、大規模で分業された組織における取締役の判断は、下部組織から提供された情報に依拠することに躊躇を覚えさせる特段の事情がない限り合理的であるとの判断枠組みを示した。その上で、被告B(ダイバーテック事業本部長)及び被告C(技術統括センター長・QA委員会委員長)については、補正係数の技術的根拠への疑問を認識し、弁護士から出荷停止の助言を受け、一旦は出荷停止を決定したにもかかわらず、免震積層ゴムの専門知識を有しない者による新たな報告(H報告)を十分に検証せず出荷停止を撤回した点に、特段の事情があるとして任務懈怠を認めた。一方、被告A(後に代表取締役に就任)は当該午後の会議に不在であり、被告D(CSR統括センター担当・文系出身)は技術的専門知識を有しなかったことから、いずれも任務懈怠を否定した。 争点(2)につき、平成26年9月16日時点では報告・公表義務を否定したが、同年10月23日時点では、H報告によってもなお大臣評価基準に適合しない物件が多数存在することが被告ら全員に明らかとなっていたとして、被告ら全員に報告・公表義務違反を認めた。 争点(3)につき、出荷停止義務違反による損害として、本件出荷品の改修工事費及び対応に係る人件費等の合計1億3828万8810円を認定し、被告B及び被告Cに連帯支払を命じた。報告・公表義務違反による損害としては、社外調査チーム費用との因果関係を否定したが、信用毀損による損害として2000万円を認定し、被告ら全員に連帯支払を命じた。