AI概要
【事案の概要】 本件は、機械装置の設計・製造等を目的とする原告(株式会社空スペース)が、被告トヨタ自動車及び被告ジェイテクト(旧光洋精工)に対し、原告が保有する「転がり装置、及びその製造方法」に関する特許権(特許第3964926号)の侵害を主張して提起した訴訟である。原告は、被告ジェイテクトが製造し、被告トヨタが「GRヤリス」のターボチャージャー用軸受(アンギュラ玉軸受)として使用する被告製品が、原告の特許発明の技術的範囲に属するとして、製造・使用・譲渡等の差止め、廃棄、及び損害賠償(一部請求として1億円)を求めた。原告は、GRヤリスの販売台数が2万5000台を超えるとして、車両価格の8%を実施料相当額と主張し、総損害額を約86億2600万円と算定した。 【争点】 主要な争点は、(1)被告製品が本件発明1及び2の技術的範囲に属するか(構成要件充足性)、(2)無効理由の有無(公然実施、先使用権、サポート要件違反)、(3)損害額であった。特に中心的争点となったのは、構成要件1-A及び2-A(転送路の間に転動自在に介挿させた複数の転動体により構成されること)の充足性であり、保持器付き軸受である被告製品が本件発明の技術的範囲に含まれるか否かが激しく争われた。原告は、特許請求の範囲に保持器を除外する文言はなく、明細書にも保持器の存在を前提とする記載があると主張した。被告らは、本件発明は転動体の公転速度を調整して間隔を変えることを技術的意義とするところ、保持器付き軸受では転動体の間隔が常に一定に保たれるため、この作用効果を奏することができないと反論した。 【判旨】 裁判所は、原告の請求をいずれも棄却した。本件発明の技術的意義について、転送路を公転する転動体の公転速度を意図的に加減することにより転動体同士の間隔を調整し、「競い合い」(転動体同士の接触)を防ぐことが解決手段であると認定した。そのうえで、構成要件1-A及び2-Aの「転送路の間に転動自在に介挿させた複数の転動体により構成され」との文言は、個々の転動体に対して公転速度の加減を行うことができ、それに基づき転動体同士の間隔を調整できる構成のものを意味すると解釈した。被告製品は、転動体である玉が保持器の穴にはめ込まれ、玉同士の間隔が常に一定に保持されている構成であるから、本件発明のように公転速度の加減に基づき転動体同士の間隔を調整することは不可能であり、構成要件1-A及び2-Aを充足しないと判断した。原告が指摘する明細書【0028】の保持器に関する記載についても、転動体同士の間隔を一定に保持する保持器付き軸受が本件発明の効果を奏する旨の記載ではないとして排斥し、その余の争点を判断するまでもなく請求を棄却した。