現住建造物等放火被告事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告人(当時21歳)は、中学校での集団生活になじめず気分変調症を発症し、14歳頃から常に死にたいとの気持ちを抱いていた。高校時代に2回の入水自殺未遂、高校卒業後にも首を絞めての自殺未遂があった。令和5年5月頃からアルバイト先の業務が多忙となり疲労が蓄積していたところ、同年6月1日未明、趣味のゲーム等に興じた後に床に就いたが寝付けず、疲労感や友人と話せた満足感から心残りはないとの思いに至り、今すぐ死にたいと考えた。大切にしてきたゲームや漫画と一緒に死にたい、自宅に放火すれば後戻りできなくなるとの考えから、自宅への放火による自殺を決意した。被告人は、父A及び母Bが現に住居に使用し、母Bが現在する北海道美唄市内の居宅(木造2階建、床面積合計約134平方メートル)において、ごみ袋にライターで点火するなどして放火し、壁や天井等に燃え移らせ、居宅の一部(焼損面積約25.72平方メートル)を焼損した。現住建造物等放火罪(刑法108条)で起訴された。 【判旨(量刑)】 懲役3年・執行猶予5年(求刑懲役5年)。裁判所は、家内に散乱したゴミ等に引火して更に燃え広がる可能性もあり、近隣住民に不安や恐怖を与え得る危険な犯行であるとした。もっとも、被告人は幼稚な動機から自殺の方法として放火を選択したものであり、他人に危害を加える意図まではなかったこと、現に負傷者はおらず自宅の一部焼損以外に被害がないことから、一般に想起される放火事案よりは悪質性が低い「子どもじみた面の残る犯行」と評価した。弁護人が主張する気分変調症の影響については、自殺を決意した点では影響が認められるものの、自殺の手段として放火を選択した点は気分変調症の影響とはいえないとして、量刑上は考慮しなかった。他方、被告人が保釈後に医療機関を受診し前向きに投薬治療を受けていること、本件を機に自分が変わらなければならないとの自覚を持つに至っていること、前科がなく粗暴な傾向も見受けられないことを考慮し、若い被告人に対して社会内での更生の機会を与えるのが相当として、酌量減軽のうえ刑の執行を猶予した。