職務発明の対価請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被控訴人(不二製油グループ本社)の元従業員である控訴人が、油脂の乾式分別法に関する2件の発明(本件発明A及びB)は控訴人が単独で行った職務発明であり、その特許を受ける権利を被控訴人に承継させたと主張して、改正前特許法35条3項・4項に基づき、相当の対価として1億0515万円及び遅延損害金の支払を求めた事案の控訴審である。被控訴人は、米国子会社FVOにおいて本件発明Aに対応する米国特許(本件特許A2)を実施し、ヒマワリ油からSOSパーツ(チョコレート用油脂原料)を乾式分別法で製造していた。控訴人は、乾式分別法の採用により被控訴人グループが得た独占の利益は少なくとも数十億円を下らないと主張した。原審(大阪地裁)は請求を棄却し、控訴人が控訴した。 【争点】 (1) 本件各発明により被控訴人が「受けるべき利益の額」(旧特許法35条4項) (2) 本件各発明について被控訴人が貢献した程度 (3) 本件各発明が控訴人の単独発明か共同発明か (4) 相当の対価として控訴人が支払を受けるべき額 【判旨】 控訴棄却。裁判所は、本件発明Bについては、米国特許(本件特許B2)に係る発明が本件発明Bとは異なる発明であり、FVOが本件発明Bに対応する特許発明を実施しているとは認められないため、そもそも独占の利益を認める前提を欠くとした。本件発明A2の自己実施による独占の利益については、(1)FVOパーツ品が溶剤分別法による製品と比較して品質面で上回っている証拠がないこと、(2)当初見込まれた設備費の大幅削減が実現せず、むしろ追加投資や増設工事を余儀なくされたこと、(3)競合他社であるIOFやLCがガーナに新設した工場でも溶剤分別法を採用しており、特許権が消滅した後も競合他社が乾式分別法を採用した事実がないことから、特許による禁止権の効果により競合他社の参入を排除して超過利益を得たとは認められないと判断した。グループ会社間の特許実施許諾料についても、知財管理体制上の会計処理以上の意味はないとして、独占の利益の根拠とはならないとした。以上から、本件各発明により被控訴人に旧特許法35条4項の「受けるべき利益」があったとは認められないとして、その余の争点を判断するまでもなく請求を棄却した。