AI概要
【事案の概要】 原告は、東京海洋大学在学中にC研究室に所属し、サバ科魚類に対するGnRH(生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン)の経口投与による産卵誘導方法に関する研究に従事していた者である。被告(株式会社ニッスイ)は、同大学との共同研究契約に基づき当該研究に関与していた水産会社である。原告は、本件特許権に係る各発明は原告が単独で発明したものであると主張し、被告に対し、主位的に特許法74条1項に基づく冒認出願を理由とする特許権移転登録手続を、予備的に譲渡契約の債務不履行解除による原状回復としての移転登録手続を、さらに予備的に持分5分の4の移転登録手続をそれぞれ請求した。 【争点】 (1) 原告の単独発明者性(争点1):本件各発明が原告の単独発明であるか、指導教員C、准教授D、博士研究員E及び被告従業員Fとの共同発明であるか。 (2) 本件譲渡契約の成否等(争点2):原告らが被告に対し特許を受ける権利を譲渡した契約が有効に成立したか、成立したとして売買契約又は負担付贈与契約としての対価不払いによる解除が認められるか。 【判旨】 裁判所は、原告の請求をいずれも棄却した。争点1について、本件各発明の特徴的部分は、(1)GnRH経口投与による産卵誘導の対象をサバ亜目魚類に特定した点、(2)魚種区分ごとの産卵誘導温度を特定した点にあるとした上で、特徴的部分(1)の着想については、原告がC研究室に配属される前の平成22年11月時点で既にC、D及びEがサバ亜目魚類への経口ホルモン投与を着想し準備を進めていたと認定した。特徴的部分(2)についても、C研究室における一連のインプラント実験の成果を踏まえ、C、D、E及び原告が水温の影響を着想し具体化したものであり、当時学部4年生ないし修士1年であった原告に対するCらの指導・助言は一般的な指導の程度を超える創作的寄与であったと判断した。さらに、Fによる特許請求の範囲の作成も、単なる出願書類作成にとどまらず特徴的部分の具体化への創作的寄与に当たるとした。争点2については、本件譲渡証書にCら及び原告全員の自署押印があること等から譲渡契約の成立を認め、同契約は売買契約でも負担付贈与契約でもなく、被告が特許出願する義務を負う非典型契約であり、被告は特許出願・取得により債務を履行済みであるとして、解除の主張を排斥した。