発明の相当の対価及び逸失利益等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告(ヤマハロボティクスホールディングス株式会社、旧商号:株式会社新川)の元従業員である原告が、在職中に職務上行った半導体製造装置関連の特許11件に係る各発明について、特許を受ける権利を被告に承継させたとして、特許法35条3項(平成16年改正前)に基づき、相当の対価の一部160万円の支払を求めた事案である。被告は令和元年7月に新設分割を行い、半導体製造装置事業を新設会社(株式会社新川)に承継させて自らは持株会社となっていた。被告は、職務発明対価の支払債務も新設分割により新設会社に免責的に承継されたと主張し、原告は、同債務は雇用契約に基づくものであり債権者の個別同意なく承継されないと反論した。 【争点】 (1) 被告の原告に対する職務発明対価支払債務が新設分割により新設会社に承継されたか否か。 (2) 相当の対価の額。 【判旨】 請求棄却。裁判所は、争点(1)について、本件各特許(11件)に関する事業がいずれも新設分割計画書に定める承継対象事業(半導体製造装置事業)の範囲に含まれると認定した。半導体装置に関する特許(本件特許1、4、9)についても、特許1及び4にはワイヤボンディング方法(半導体製造装置の動作プロセス)の発明が含まれ、特許9は半導体製造装置により製造される半導体装置に関するものであるから、いずれも承継対象事業に属すると判断した。そのうえで、職務発明対価支払債務は、新設分割計画書の承継権利義務明細表に定める「その他流動負債」に含まれるとし、同計画書の免責的債務引受けの定めにより、新設会社に免責的に承継されたと認めた。原告の雇用契約に基づく債務であるとの主張については、仮にそうであっても流動負債として承継されることは明らかであるとして退けた。また、債権者の個別同意が必要との主張についても、新設分割は会社の営業を包括的に承継させる組織上の行為であり、債権者保護は会社法810条の債権者異議手続により図られているところ、被告は官報公告及び電子公告を行っており各別の催告は不要であるとして、原告の個別同意なく債務が承継されたと判断した。以上から、争点(2)を判断するまでもなく、原告の請求を棄却した。