特許出願審査請求手続却下処分取消請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 原告(コンピュータソフトウェア会社)は、平成30年9月に弁理士を代理人として特許出願を行ったが、出願審査請求期間の末日である令和3年9月5日までに出願審査の請求をしなかった。そのため、本件出願は特許法48条の3第4項により取り下げたものとみなされた。原告は令和4年3月に出願審査請求書と回復理由書を提出したが、特許庁長官は、期間徒過について「正当な理由」が認められないとして手続を却下する処分をした。原告は、代理人弁理士がうつ病を患い業務遂行が困難であったこと、改正法(令和3年法律第42号)による改正後の特許法48条の3第5項が適用されるべきこと等を主張し、本件却下処分の取消しを求めた。なお、改正法は出願審査請求期間経過後の救済要件を「正当な理由」から「故意によるものでないこと」へと緩和するものであったが、経過措置により施行日前に取り下げとみなされた出願には旧法が適用されるとされていた。 【争点】 1. 改正法による改正後の特許法48条の3第5項が本件に適用されるか(経過措置の適用の可否・憲法29条2項違反の有無) 2. 出願審査請求期間の徒過について旧特許法48条の3第5項の「正当な理由」があったか 3. 特許庁長官が弁理士の診断書の提出を求めたことの適法性 【判旨】 裁判所は、原告の請求を棄却した。争点1について、改正法附則2条4項は施行日前に取り下げとみなされた出願には旧法を適用すると明確に定めており、原告が主張する事情があっても法令に定められたのと異なる適用をすることは相当でないとした。また、旧法の「正当な理由」の要件自体が財産権を侵害するものではなく、改正法附則の経過措置も従前の権利に新たな制限を課すものではないから、憲法29条2項に違反しないと判断した。争点2について、「正当な理由」とは、出願人(代理人を含む)が相当な注意を尽くしていたにもかかわらず客観的に期間内に請求書を提出できなかった場合をいうとした上で、弁理士がうつ病を主張するものの、請求期間中に他の特許について手続補正書・意見書の提出や審査請求・特許出願を行っていた事実が認められ、継続的に業務遂行が不可能であったとは認められないとして、「正当な理由」を否定した。争点3について、本件が新型コロナウイルス感染症の影響を受けた手続であるとは認められず、影響を受けた手続とそうでない手続で方式に差を設けることも不合理ではないとして、違法性を否定した。